コラム

5大陸の首脳27人が署名した「パンデミック条約」の仕掛け人と中身【声明全文訳付き】

2021年04月01日(木)15時20分

別のパンデミックや、他の大規模な健康上の緊急事態も発生するでしょう。どの国の政府も、どの多国間組織も、単独ではこの脅威に対処することはできません。問題は「もし起こるなら」ではなく「いつ起こるか」です。

私たちは共にあって、パンデミックを効果的、かつ完全に連携したやり方で、予測し、予防し、検出し、評価し、対応できるようにしなければなりません。新型コロナウイルスのパンデミックは、全員が安全にならない限り、誰も安全ではないということを、強烈に痛感させたのです。

したがって私たちは、今回のパンデミックと将来のパンデミックのために、安全で効果的、かつ手頃な価格のワクチンと、医薬品、診断をする製品への、普遍的かつ公平なアクセスを確保することに取り組みます。予防接種は世界的な公共財であり、できるだけ早くワクチンを開発、製造、配備できるようにする必要があります。

このためにこそ、「新型コロナウイルスと闘うための道具へアクセスすることを加速するための取り組み(措置)」(Accelerator for Access to Covid-19 / ACT Accelerator、直訳すると「新型コロナウイルスに対するアクセスを加速する取り組み」)が設立されました。目的は、検査、治療、ワクチンへの平等なアクセスを促進し、地球規模で医療システムを支援することです。

「新型コロナウイルスに対するアクセス加速への取り組み(ACT Accelerator)」は、様々な面で期待に応えてきましたが、平等なアクセスはまだ現実のものとなっていません。私たちは、世界的にそのことを奨励するために、もっと多くのことをすることができます。

この見解にもとづいて、各国が協力して、パンデミックへの備えと対応に関する新しい国際条約を策定すべきだと、私たちは信じています。

このような新たな集団的コミットメント(取り組み)は、最高の政治レベルでパンデミック対策を強化するための、重要な一歩となるでしょう。世界保健機関(WHO)の憲章は碇(いかり)として機能し、他の組織の数々によって支えられるでしょう。これらなくしては、この事業ーー万人のための健康という原則に基づいたこの事業は、達成できないでしょう。

このような条約は、健康に関する世界的な既存の措置、特に国際保健規則(訳注:2005年にWHOが定めたもの)に基づいて構築されることになるでしょう。このために、物事を改善するための出発点となる、強固で実績のある基盤を確保できるようになるでしょう。

この条約の主な目的は、将来のパンデミックに対して、公的機関と世界の社会全体が関与し、国や地域、世界の能力と回復力を強化するという、アプローチを促進することです。

これは、とりわけ国際協力の大きな強化を意味します。例えば、警報システム、情報の共有、研究、ならびに、ワクチン、医薬品、診断をする製品、個人用保護具のような医療手段と公衆衛生の介入策を、居住地的、地域的、世界的に生産し配布することがあります。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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