コラム

SNSで燃え上がる【偽・誤情報の拡散】...カギとなる対抗する力とは?

2024年09月18日(水)18時17分

偽・誤情報対策の鍵となる市民の力

見直しの議論では、偽・誤情報の脅威およびその対策は根拠が乏しいことが指摘されることが多い。裏付けのない脅威を煽ってきたと言っているわけで、偽・誤情報対策そのものが陰謀論やナラティブだったと言うに等しい。こんなことになってしまったのには理由がある。


 

以前に記事(英暴動は他人事ではない......偽・誤情報の「不都合な真実」)に書いたように、メディアにとって偽・誤情報問題は読者に受けがよく、クレームが少ない貴重なテーマなのだ。

とりあえずSNSプラットフォーム企業を批判しておけば記事が成立する。そのせいで2015年から2023年の米主要紙の調査では偽・誤情報は3番目に多くより上げられていた(中でもSNSプラットフォームへの批判記事がもっとも多かった)。

政府にとっては、やっかいな国内問題に市民の目が向くのを避けて、ロシアの脅威を持ち出して、安全保障問題にすり替えることができる。調査研究機関や専門家にとっても、偽・誤情報問題が大きくなれば新しい資金を得られる可能性が増える。

「偽・誤情報の脅威」という陰謀論は、情報への不信を広げ、政府への不満を増大させ、分断を広げている。その解決には真偽判定や偽・誤情報拡散アカウントのテイクダウンのような対症療法だけでは逆効果になる。

基礎的な対策として、政府、メディア、研究者によって誇張された偽・誤情報問題を実態に即した形で把握し直し、信頼関係を再構築する必要があるのだ。

信頼関係が確立されていれば、偽・誤情報がばらまかれても信じる人や拡散する人は少なく、それによって破壊的な行動を起こす人はほとんどいなくなる。

ニューズウィーク日本版 トランプのイラン攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月10号(3月3日発売)は「トランプのイラン攻撃」特集。核・ミサイル開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。アメリカとイランの全面戦争は始まるのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

イーライリリー、第2四半期にも米で経口肥満症薬発売

ビジネス

法人企業統計、10─12月期設備投資は前年比6.5

ワールド

仏独が核抑止で協力強化へ、情勢変化に対応 欧州防衛

ワールド

ハメネイ師殺害で報復攻撃も、米国土安全保障省が脅威
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医師が語る心優先の健康法
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 7
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 8
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    【トランプ関税はまだ序章】新関税で得する国・損す…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 7
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story