コラム

SNSで燃え上がる【偽・誤情報の拡散】...カギとなる対抗する力とは?

2024年09月18日(水)18時17分

攻撃側であるロシアや中国は戦略的に「市民」の力を利用してきた

市民の力はプラスにもマイナスにも作用する。多種多様な市民がおり、一定の方向に向けて集まれば、それは大きな力となる。

攻撃側であるロシアや中国などは戦略的に市民の力を利用してきた。


 

たとえば欧米の極右の多くはロシアに共感を持っている他、QAnonなどの陰謀論グループも中露と相互に情報拡散を行っている。直接の関係はわずかだが、ネット上で発信した内容を相互に増幅し合うなどしている。

ターゲットの国にいる市民の利用には正体を隠して実行できるというメリットの他に、相手国政府の対処が難しいというメリットもある。

たとえは、多くの偽・誤情報やデジタル影響工作の専門家は、「ロシアなどが狙ってくるのは、もともと相手国の中にあった問題ですよね?」と訊ねると、「その通り」と答える。

「それでは、根本的な対策は国内問題の解決ですね」というと答えられない。

皮肉なことに多くの民主主義国は漏れなく深刻な国内問題を抱えており、その問題の解決は難しいうえ、下手な解決策を提案しようものなら多くの市民の反発を招きかねないのだ。

移民問題、経済格差、人種差別など国内の火種は山ほどある。相手国の中にいるこうした不満分子の市民を焚きつけて火種を燃え上がらせる方法に対して、相手国ができるのは対症療法までに留まる。

さらに、多くの国では海外からの干渉に対応する省庁と、国内の問題に対処する省庁が異なっており、連携して動きにくいという事情もある。

相手国の市民の利用は攻撃側からみるといいことずくめのため、これからも今後も積極的に利用してくることは間違いない。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)など著作多数。X(旧ツイッター)

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