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デジタル紛争の新たなステージ:イスラエルとハマスの情報戦が示すサイバー戦の進化
ハマスのサイバーオペレーション
サイバー空間は充分な装備を持っていない非国家アクターでも戦いを展開しやすい領域である。ハマスもサイバー空間での活動を重要視している。ハマスのサイバー能力はグリーンハット程度とアメリカのシンクタンクである大西洋評議会は推定している。グリーンハットというのは、耳慣れない言葉だが(実は筆者も初めて聞いた)、新規の参加者で洗練されていないが影響力を与えることに貪欲で学習するハッカーを指す。
日本以外のほとんどの国ではサイバー攻撃とデジタル影響工作やネット世論操作は一体のものと考えられている。そこで本稿では両方について触れることにする。なお、出典元については長くなるため拙ブログに掲載した。
ハマスのサイバー攻撃の中心を担っているのは軍事部門アル・カッサム旅団のサイバー部隊Al-Quds Electronic Armyと言われているが、ハクティビストなども参加しており、ハマス自身にも全体像がつかめているわけではなさそうだ。
電気を使用できるのは1日平均11時間程度という電力不足など基本的なインフラ不足に悩まされていながらもハマスのサイバー能力は成長を続けている。2018年にはイスラエルが「ブロークンハート」と名付けた作戦が行われた。ハニートラップでイスラエルの兵士にマルウェアをインストールさせて、情報を盗み出す作戦だ。イスラエルでは18歳から兵役を義務づけられているため、その若年層を狙った攻撃だ。ハマスのサイバー部隊は、さらにGoogle Play Storeに2つの出会い系アプリを登録し、兵士たちから情報を盗み出した。
2018年の夏にはイスラエル向けに2つのアプリを立ち上げた。1つは、開催中のワールドカップのサッカー情報をリアルタイムで伝えるもので、もうひとつはガザからの砲撃をイスラエル人に警告するためのロケット弾警告アプリだった。砲撃の警告アプリはハマスの実際の攻撃に合わせてアプリストアに登録されており、イスラエル市民の不安と混乱につけ込んだものだった。また、ジョギングアプリも作り、ガザの境界付近で兵役に就いているイスラエル兵の電話番号を特定していた。
2019年と2021年の二度にわたってイスラエルはハマスのサイバー攻撃能力を殲滅するために空爆を行ったが、その後もハマスからのサイバー攻撃が続いていることから殲滅にはいたっていないことがわかる。一説には空爆を避けるためにトルコに拠点を設けて移ったという説や近隣国の支援者の協力を得ているという説もある。
ハマスは以前からサイバー面に関してイランの部隊(Islamic Revolutionary Guard Corps=IRGCのQuds Force)の支援を受けていることが知られている。今回も連携している可能性が高く、ハマスがTelegramで配布していたアプリを解析したRecorded FutureのInksiktグループはイランの関与の可能性があることを発見している。
今回の紛争が始まると、すぐにロケット攻撃に関する情報やアラートのサイトに対してDDoS攻撃が行われた。以降、新聞とメディアのサイトがDDoS攻撃の主な標的となって56%を占めている。次いでIT産業34%、その次は金融企業、4位は政府機関サイトだったことがCloudflare社によって明らかにされた。
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