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アメリカ軍のデジタル影響工作はなぜ失敗したのか?
今回暴露された一連のデジタル影響工作では、正体を明かしたら不利な領域で正体を明かしており(メッセージにアメリカ軍との関係を臭わせたり、リンクしていた)、ナラティブが単純でわかりやすく憎しみを募らせるようにはできていなかった可能性が高い。
そして、アメリカ軍はもうひとつ大きなことを見落としていた。デジタル影響工作の舞台となるプラットフォームを運営しているMeta社などのビッグテックは、反アメリカ的(正確にはアメリカ主流派を自称するリベラル)な主張を優遇する傾向があるのだ。
ビッグテックはアメリカの味方ではない
Metaやグーグルなどのビッグテックの影響力は大きく、地政学上のアクターとまで言われている。彼らは自社のビジネスの利益のために、反アメリカ的な主張を支援している。具体的に言うと、デマや陰謀論を優遇して多額の広告費用を彼らのサイトに支払い、世界各地に分断と紛争の種をまいている。
グーグルが権威主義国と民主主義国の両方に協力し、まるで分断を広めることでビジネスを拡大しているように見えることは前回の記事で指摘した通りだ。
彼らはアメリカ企業ではあるが、アメリカの味方ではないのだ。世界で民主主義国が減り、中国などの権威主義国のGDPが増加していることは彼らにとって将来の顧客がそちらになることを示唆している。そもそもフェイスブックの利用者の7割以上はずっと前からグローバルサウスなのだ。
つまりデジタル影響工作において、ビッグテックの提供するプラットフォームの利用は欠かせないが、そこでは反アメリカ的な主張が優遇されている現実がある。もちろん、アメリカでも共和党や右派の主張なら優遇されるだろう。しかし、民主主義的な価値は歓迎されない。
根本的な問題の隘路に陥ったアメリカ
そもそもデジタル影響工作は、破壊や混乱を引き起こす時にもっとも効果を発揮する。自称世界の主流派であり、リーダーであるアメリカは、アメリカである時点で不利なのだ。数少ない有利な領域が前図の国際世論だ。
同じことは日本にも言える。アメリカを中心とした世界を想定している日本は、アメリカと同じ隘路にはまりやすい。また、国内には、アメリカ軍以上に知見や経験を持った人材がいない。同じことをやろうとすれば、アメリカ軍以上の失敗となるだろうし、Meta社やツイッター社はアメリカ政府に対するほど、日本政府にはやさしくないだろう。両社は国防総省への最初の報告からアカウント削除まで2年待ったが、日本相手なら連絡と同時に削除し問題を公開しかねない。
ただし、今回同様、日本政府を名指ししないだろう(Meta社とツイッター社はアメリカ軍の関与を明示していない)。 そしてグラフィカ社やSIOのレポートも出ないだろう。国民にはなにが起きたかわからないままとなり、日本の担当者は叱責を受けるくらいで業務を続け、効果のない活動に予算が使われ続け、国内には実績はあるが成果をあげたことのないデジタル影響工作企業が幅をきかせる未来が見えるようだ。
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