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産業化し国家と結びつくサイバー犯罪者たち 2022年サイバー空間の脅威予測
注意が必要な国家としては、ロシア、イラン、中国、北朝鮮があげられていた。日本ではイランのサイバー攻撃についてはあまり知られていないが、つい先日も選挙への介入を行ったイラン人ハッカーが起訴された。
主要なものを表にすると下記になる。個々の項目について、ご紹介していきたい。ただし、項目には分けたもののそれぞれが密接に関係しており、独立した事象はほとんどないと言っていいだろう。たとえば、ランサムウェアは配布チェーンを使って配布され、サプライチェーン攻撃やOTへの攻撃に利用される。
拡大、機能分化、標準化の進むランサムウェア産業
エコシステムあるいは産業として発展を続けており、被害者も増加の一途である。チェックポイントソフトウェアテクノロジーズによれば、2021年5月、米国の保険会社がハッカーに4,000万ドルの身代金を支払っており、2022年には身代金の金額はさらに増加し、被害者の数も増加する。
ビジネスモデルはRaaS(ランサムウェアアズアサービス)による二重恐喝型が主流であり、役割による分化が進んでいる。EmotetやIcedID、TrickBotなどのマルウェアファミリーはそのビジネスを配布ネットワークの提供へとシフトし、ランサムウェアをクライアントに届けるディストリビューターとなった(ソフォス)。ブラックベリー社のレポートによると、Zebra 2104は、ランサムウェアの運営者に一部の被害者への最初の侵入の足がかりを提供している(カスペルスキー)。
こうした一連の変化によって、2022年にはRaaS業界の中心はランサムウェアをコントロールする側(管理、運営側)から、被害者のネットワーク(配布、アフィリエイター)をコントロールする側へとシフトする(マカフィー)。また、アクター間での争いも起こり、被害者がとばっちりを受ける事態も予想される(マンディアント)。
規模の拡大や機能分化と並行して標準化も進んでいる。2021年にConti RaaSのアフィリエイター向けの資料が公開され、異なる攻撃者グループがこのドキュメントに沿った戦術、技術、手順(tactics,techniques and procedures = TTP)に沿って攻撃を実行していたことが明らかになった。
こうした動きに対して、法制度などの整備、強化が進むことも予想されている。ランサムウェアの支払い、交渉を規制する法律を持つ国家の割合は、2021年には1%未満だったが、 2025年末には30%にまで上昇する(ガートナー)。また、政府は被害者が身代金を支払うのを抑制するために、みせしめに身代金を支払った組織を処罰する可能性がある(マンディアント)。
アメリカではサイバー関連の規制を強化する超党派の動きが活発になっているが、その一方で批判もあり、先行きは不透明だ。いずれにしても規制強化の方向は間違いないだろう。
なお、ランサムウェアの脅迫者との交渉を請け負う交渉代理会社も増加している。
クラウド
企業や官公庁で利用の広がるクラウドは格好の攻撃対象となっており、脆弱性を突いた大規模な攻撃が行われる(チェックポイント)。データ漏洩や悪用は今後も増加すると予想されており(マンディアント)、爆発的に増加する可能性がある(カスペルスキー)。
AI
ディープフェイクやディープフェイク・オーディオは世論操作や株価操作や詐欺などに用いられている(チェックポイント)。ディープフェイクによって多要素認証(MFA)セキュリティプロトコルや顧客認証(KYC)の本人確認手段を回避した事例も出て来た。2022年以降、ディープフェイク技術は広く普及し、犯罪者やスパイはソーシャルエンジニアリングをより説得力のあるものにしたり、特定のターゲットに合わせたコンテンツを生成したり、自動ID認証システムを破るために利用するようになる(マンディアント)。
AIはサイバー攻撃および攻撃の検出に用いられるようになり、攻撃側と防御側双方にとってなくてはならないものとなった。この分野では2つの革新の可能性がある(ソフォス)。1つは、ユーザー視点の機械学習という新分野。今後数年でセキュリティ製品の開発は直感的に行えるようになる。ネットサービスのレコメンデーションシステムのようにAI駆動のセキュリティ・オペレーション・センター(SOC)が効率的に運用される。2つ目は、スーパーコンピュータ規模のニューラルネットワークを利用して、これまで自動化されたシステムでは難しいと考えられていた問題(自動脆弱性検出やパッチ適用など)を解決できる可能性だ。
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