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大ヒット曲「イスラエルが嫌い」の歌手が亡くなった
ただ、どの曲もチャカポコ感満載で、メロディーは似たりよったり、アラビア語(ベタベタのエジプト方言)がわからないと、どの歌を歌っているのか、区別するのすらむずかしい。正直なところ、彼の歌に政治的なメッセージ性や思想的な深みを期待すること自体、無理があろう。基本的には政権に楯突く気はさらさらなく、むしろ、媚びるほうである。
ただし、これも、「イスラエルが嫌い」を筆頭にシャァバーンの歌の詩の多くを書いていた作詞家イスラーム・ハリールの戦略だったといわれている。
2011年にムバーラクが失脚して、ムスリム同胞団が表舞台に出れば、同胞団を支持する姿勢を示したが、同胞団が権力の座から引きずり降ろされれば、同胞団を攻撃する。その後は一貫してシーシー現大統領支持の姿勢を示していた。
昨年9月、エジプトで大規模な反政府デモが発生したとき、きっかけとなったのは、俳優兼実業家でスペイン在住のエジプト人ムハンマド・アリーがYouTubeでシーシー大統領を批判したことであった。シャァバーンはこのとき早速、ムハンマド・アリーを嘘つきだと非難する歌を発表している。また、2017年、エジプトがカタルと断交したときには、カタル批判の歌まで出した。
元外相は1か月ぶりぐらいにツイートし、その死を悼んだ
まあ、節操がないといえば、そのとおりだが、彼がスターになるきっかけとなったアムル・ムーサーとの関係はずっと悪くなかったようだ。2012年の大統領選挙では、シャァバーンは当然、アムル・ムーサーを支持した(ただし、アムル・ムーサーは落選、ムスリム同胞団のムハンマド・ムルシーが当選した)。
そして、シャァバーンが死んだとき、元外相は1か月ぶりぐらいに自分のツイッター公式アカウントでツイートし、シャァバーンの死を悼んだのである。実際、エジプトのみならず、大半のアラブ諸国のメディアも、彼の死をアムル・ムーサーとの関係に絡めて報じていた。
رحم الله شعبان عبد الرحيم .كان مصريا طيبا يعيش ويؤدي ويمتع . كا ن يحب ويكره كما أغنيته الشهيرة. كان مؤديا من نوع خاص....بعض من الفن وبعض من الطرافة المصرية مع قليل من السياسة..
— Amre Moussa (@amremoussa) December 3, 2019
خليط حفر لشعبان،مع هييييته الشهيرة ،مكانا في قلوب المصريين. رحمه الله
残念ながら、彼の音楽は興行的には大きな成功を収めていなかったといわれている。大ヒットした「イスラエルが嫌い」も、多くはカセットテープの海賊版で広まっており、それほど大きな収入をもたらさなかったらしい。
それ以降の楽曲は、大衆にも飽きられたのか、大したヒットにはならなかった。もっとも、彼は音楽だけでなく、映画やテレビでも大人気であったので、そこそこ稼いでいたであろう。
果たしてエジプトで、第二第三の「シャァブーラー」が現れるだろうか。それとも、彼は時代のあだ花としての存在にすぎなかったのだろうか。ムバーラク時代にすっかり戻ってしまった感のあるエジプトで、彼にはもはや歌うべき歌がなかったのかもしれない。
なお、悔やんでも悔やみきれないのは、エジプトであれほど苦労して入手したシャァバーンの「イスラエルが嫌い」のカセットテープがどこを探しても見つからないのである。
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