コラム

コスプレは規制だらけ、サウジで初のコミコン開催

2017年02月27日(月)17時43分

旗振り役の副皇太子は保守派を抑え込めるか

なお、このコミコン、サウジアラビアのタイム・エンターテインメントという民間企業が主催し、政府機関である総合エンターテインメント委員会が後援を行っている。前者は中東全域でタレントのマネージメントやイベントの開催を行っており、WWEの試合をリヤードで成功させている。後者は、昨年鳴り物入りではじまったサウジの経済改革プログラム、「サウジ・ビジョン2030」でも中心的役割を果たすと期待される部署である。

だが、コミコン終了後、総合エンターテインメント委員会はコミコンのイベントで規定に反する活動があったことを認め、処罰の可能性も示唆したのだ。TwitterなどSNSではコミコンの様子が紹介され、それらの多くは好意的なものであったが、否定的な意見も実はかなり含まれていたのである。

たとえば「كوميكون_حفل_عبدة_الشيطان_بجده# (ジェッダのコミコンは悪魔の下僕〔アブダッシェイターン〕のパーティー)」というハシュタグで検索すると、こうしたイベントを苦々しく思っている連中が一定数存在することがわかる。

実際、コミコンとは直接関係ないが、総合エンターテインメント委員会幹部が、今年中にもサウジ国内で映画館を開設し、またコンサートを行う可能性を示唆したところ、サウジアラビア最高宗教権威アブドゥルアジーズ・アールッシェイフ総ムフティーが反対するということがあった。映画館やコンサートは男女が混じる場になり、欧米の腐敗堕落した文化を広めるものだとの見解を示し、サウジアラビアの新しいエンターテインメント政策にいきなり冷水を浴びせたのだ。

「サウジ・ビジョン2030」の旗振り役であり、現在サウジアラビアでもっとも力をもっているとされるムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子が、はたしてこうした保守派たちを抑え込めるかどうか、サウジアラビアの変化を見るうえで大きなカギとなるだろう。

コミコン会場では、王族であるサウード家のメンバーも何人か顔を出していたようであり、そのうちの1人、ファハド・フェイサル王子はアラブ・イスラームのスーパーヒーローに関するパネルにパネリストとして参加していた。

ちなみにサウジ人の若者の多くが日本のアニメを見て育っており、アラビア語でアニメといえば、日本のアニメを指すほど知られている。しかし、ジェッダでのコミコンでは、少なくともTwitterやYouTube、Instagramをのぞいているかぎり、日本のプレゼンスはそれほど多くなかったように思う。

NARUTOやONE PIECEのコスプレはそこそこいたが、残念ながら、バットマンやハルク、ダースベーダーといったアメコミ、ハリウッド勢に圧倒的に押され気味だったのではないか。昨年世界を席巻したポケモンも、ほんのわずかしか見つからなかった。

おっと、サウジでは10年以上前にポケモンは反イスラームってことで禁止されていたっけ。あるいは、総合エンターテインメント委員会が認めた違反ってのは、ポケモンのコスプレか?

【参考記事】よみがえった「サウジがポケモンを禁止」報道

プロフィール

保坂修司

日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究顧問。日本中東学会会長。
慶應義塾大学大学院修士課程修了(東洋史専攻)。在クウェート日本大使館・在サウジアラビア日本大使館専門調査員、中東調査会研究員、近畿大学教授、日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長等を経て、現職。早稲田大学客員上級研究員を兼任。専門はペルシア湾岸地域近現代史、中東メディア論。主な著書に『乞食とイスラーム』(筑摩書房)、『新版 オサマ・ビンラディンの生涯と聖戦』(朝日新聞出版)、『イラク戦争と変貌する中東世界』『サイバー・イスラーム――越境する公共圏』(いずれも山川出版社)、『サウジアラビア――変わりゆく石油王国』『ジハード主義――アルカイダからイスラーム国へ』(いずれも岩波書店)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

不明兵捜索、時間との戦い イランの猛攻耐えた米軍救

ワールド

トランプ氏、イランに合意期限「6日」 米戦闘機乗員

ワールド

米、イランで不明の戦闘機乗員救出 トランプ氏「史上

ワールド

イラク南部の巨大油田に攻撃、3人負傷 イラン国境に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 6
    イラン戦争は「ハルマゲドンの前兆」か? トランプ…
  • 7
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 8
    【写真特集】天山山脈を生きるオオカミハンター
  • 9
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 10
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story