ニュース速報

ワールド

米仏首脳が早くも対立、NATO「脳死」発言や防衛費巡り

2019年12月04日(水)09時14分

 トランプ米大統領(右)とマクロン仏大統領は3日、NATO首脳会議を前に早くも火花を散らした(2019年 ロイター/KEVIN LAMARQUE)

[ロンドン 3日 ロイター] - トランプ米大統領とマクロン仏大統領は3日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を前に早くも火花を散らした。トランプ氏が欧州に防衛費負担を増やすよう求めたのに対し、マクロン氏はNATOが機能不全に陥っていると再び主張した。

ロンドンを訪れたトランプ大統領は、NATOが「脳死状態」としたマクロン大統領の発言について「非常に、非常に不快な発言だ」と記者団に語った。さらに、防衛費の支出目標である国内総生産(GDP)比2%の「達成義務を怠っている」国を米軍が守る必要があるのかと疑問を呈した。トランプ氏はドイツを名指しして防衛費負担の目標未達を批判してきた。

「NATOや通商面でいいように利用されるのは間違っているが、それが実際に起きている。許してはならない」と強調し、航空業界や欧州の「デジタル課税」を含む欧米間の通商問題にも言及した。

一方、マクロン氏はNATOを再び批判し、冷戦終結以降に明確な目的を打ち出せなかったことが大きな問題だと指摘。NATO加盟のトルコが過激派組織「イスラム国」の関連組織と協力関係にあることも非難した。

同日遅くにツイッターへの投稿で「NATOに資金を投じ、自国の兵士を軍事作戦に参加させて生命を危険にさらすのであれば、NATOの原則についてはっきりさせる必要がある」と訴えた。

NATO加盟国の首脳は3日夜、ロンドンのバッキンガム宮殿で開かれたエリザベス女王主催のレセプションに出席。首脳らは4日にロンドン郊外のホテルで議論を開始する。

<集団的自衛権巡り亀裂も>

トルコのエルドアン大統領は同日、トルコがテロ組織と見なすクルド人勢力の民兵組織、人民防衛部隊(YPG)組織をNATOとしてテロ組織と認定しなければ、バルト諸国とポーランドをロシアの脅威から守る計画に反対する方針を示した。

今年で創設70周年を迎えるNATOは有事の際に加盟国を防衛する集団的自衛権が条約で定められているが、ポーランドとバルト諸国の防衛計画を巡る足並みの乱れがNATOの結束に影を落としている。

ただ、トルコと英国、フランス、ドイツの首脳はこの日会談し、シリア情勢を巡り、文民に対するすべての攻撃を終わらせる必要があるとの見解で一致した。

英首相府の声明によると、4カ国の首脳は「難民の安全で自主的、持続可能な帰還に向けた条件を整えるために取り組む」と表明したほか、「いかなる形のテロに対しても戦いを継続する必要がある」と訴えた。

NATO首脳会議では、欧州、トルコ、カナダがトランプ大統領の批判に対応し、2024年までに約4000億ドルの防衛費を支出すると確約し、米国の拠出額削減に合意する見通し。

加盟国首脳はまた、拡大する中国の軍事活動を監視するための新たな戦略を承認し、宇宙空間を陸、海、空、サイバー空間と並ぶ「戦場」と認定する見通し。

*内容を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定に4日署名も=関係筋

ビジネス

カナダ、報復関税発動 トランプ氏は「相互関税に直面

ワールド

ロシア大統領「ミャンマーとの関係着実に発展」、軍政

ワールド

プーチン大統領、米イラン間の仲介で合意 核協議など
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政権の対カナダ25%関税
  • 3
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Diaries』論争に欠けている「本当の問題」
  • 4
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    バンス副大統領の『ヒルビリー・エレジー』が禁書に…
  • 7
    「70年代の日本」を彷彿...発展を謳歌する「これから…
  • 8
    米大統領執務室での「公開口論」で、ゼレンスキーは…
  • 9
    米ウクライナ首脳会談「決裂」...米国内の反応 「ト…
  • 10
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 5
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 6
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 9
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中