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アングル:韓国MERS感染拡大に大病院の「落とし穴」

2015年06月12日(金)18時27分

 6月12日、韓国で14人目のMERS感染者となった男性は、首都ソウルにある病院の救急病棟で、ベッドが空くのを2日半待たされたという。ソウル医療センターで10日撮影。提供写真(2015年 ロイター/Yun Dong-jin/Yonhap)

[ソウル 12日 ロイター] - 韓国で14人目の中東呼吸器症候群(MERS)の感染者となった男性(35)は、首都ソウルにある病院の救急病棟で、ベッドが空くのを2日半待たされた。しかしこれは、一流の病院では珍しいことではないという。

男性にMERS感染の疑いがあると判明したころまでには、病院職員や来院者、患者など900人近くが救急病棟に出入りしていた。

この病院では55人がMERSに感染し、そのうち高齢者4人の死亡が確認されている。韓国でのMERS感染者数は120人を超え、これまでに10人以上が死亡した。

韓国には高度な医療制度と国民健康保険がある。しかしそこには、一流の病院に入院するには何日も待たなければいけないなどの「落とし穴」もある。

MERS感染拡大の一因には、こうした入院待機期間や家族による見舞い時間の長さがあるとの指摘もあり、変革を求める声が上がっている。

保健福祉省の責任者は11日、「救急病棟が入院希望患者の待合室として使用されないよう計画を策定する」と語ったが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。

<命がけの転院>

男性はMERSと診断される前、ソウルから南西65キロにある平沢市の病院に入院していた。男性はそこで、韓国初の感染者となった別の患者と同じ病棟にいた。中東への渡航歴があるこの患者も、当初はMERSと診断されていなかった。

男性はその後に発熱して平沢市内の別の病院で3日間入院した後、医師から大きな病院へ行くよう指示された。男性はサムスングループ傘下のサムスン医療院で治療を受けようと、バスでソウルに向かった。そこは同グループの李健熙(イ・ゴンヒ)会長が1年以上前から入院している病院だ。

ソウルに5月27日に到着した男性の具合はかなり悪化しており、救急車で江南区にあるサムスン医療院に搬送された。同院によると、ベッドの空きを待つ間、男性は肺炎の症状を示したため、救急病棟の複数の場所で治療を施したという。男性は中東への渡航歴がなかったため、MERS感染の可能性は検討されなかった。同国初の感染者との接触も知られていなかった。

5月29日の夕方になってようやく当局から病院に、男性が平沢市の病院で最初のMERS感染者と接触しており、感染の疑いがあるとの連絡があった。男性が救急病棟から移されたのはその後であり、その翌日に感染が確認された。

サムスン医療院の匿名の職員は男性について「ここに来たときに肺炎の症状があったが、他の患者と同様に入院するまで時間がかかった」と語った。

<入院まで3日待ち>

韓国の医療施設全体で病床数が不足しているわけではない。経済協力開発機構(OECD)の最新の統計によれば、人口1000人当たりの病床数はOECD平均の2倍以上となっている。だが、ソウルにある有名な病院には全国から患者が集まってくる。

先述のサムスン医療院の職員によると、季節の変わり目である今の時期には高齢者の多くが体調を崩すため、入院待機期間は平均で約3日となっている。ただ、最も急を要する場合は優先されるとしている。

保健福祉省によると、14番目の感染者となったこの男性に端を発するMERS感染者のなかには、母親を見舞うために救急病棟を訪れた妊婦も含まれている。妊婦の両親も同病棟でMERSウイルスに感染した。

韓国の病院団体職員は「妊婦の感染例からも分かるように、韓国では患者の親族も救急病棟に入ることができる。MERSを扱うにはあらゆる問題をつぶさに調べる必要がある」と指摘。「病院業界の規模に比べて、システムがまだ弱い」と述べた。

(Ju-min Park記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)

*写真を差し替えて再送します。

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