インタビュー:USスチール買収、年内クロージングの自信は100%近い=日鉄副会長
日本製鉄の森高弘副会長は、ロイターとのインタビューで、米鉄鋼大手USスチールの買収が年内にクロージングする自信は「100%近い」と述べた。写真は都内で2023年11月撮影(2024年 ロイター/Ritsuko Shimizu)
Ritsuko Shimizu Yuka Obayashi Katya Golubkova
[東京 5日 ロイター] - 日本製鉄の森高弘副会長は、ロイターとのインタビューで、米鉄鋼大手USスチールの買収が年内にクロージングする自信は「100%近い」と述べた。USスチール買収は同社の海外戦略に欠かせない米国での事業拡大の重要なピースとなっており、USスチールの買収をあきらめることはなく、承認が得られなかった場合でも訴訟を含めあらゆる手段を講じるとした。
11月16日からUSS買収に関連して8回目の訪米を行った森副会長は「米大統領選挙が終わり、本当の価値を裸で議論できる環境になっている」と述べ、訪米時の議員や地域住民との対話を通じても「もう間違いなくクローズするだろうと思っている」とした。
安全保障への影響を巡る対米外国投資委員会(CFIUS)や反トラスト法に基づく独禁当局の判断は、年内に出る見通しとなっている。
同社の海外戦略は、伸びている市場、同社の製品や技術が評価される市場に入ること。そういう意味では「米国をあきらめることはない。米国抜きでのグローバル戦略はあり得ない。それをずっと追い続ける」と述べた。この考え方からもUSスチール買収は重要となっており「あきらめることはない。訴訟も含め、可能なあらゆる手段を講じる」とした。
森副会長は、11月に訪米した際、USスチールの本社があるペンシルベニア州ピッツバーグの地元では買収に期待する声が非常に強かったと振り返り「年内のクロージングは確実にできるのではないかと、背中を押された感じだ」と述べた。日鉄側から求めている全米鉄鋼労働組合(USW)のデービッド・マッコール会長との会談があったかどうかについては「ノーコメント」とした。
石破茂首相がバイデン米大統領に書簡を送り、日鉄のUSスチール買収計画を承認するよう求めたことについては、日鉄から要請したものではないとしながらも「日本政府が強く推している、きちんとした手続きを踏むよう目を光らせているということは重要なこと。非常にありがたいことだと思っている」と述べた。
トランプ次期米大統領は2日、USスチールは一連の税制優遇措置や関税を通じて再び強くなると述べ、日本製鉄の買収計画に改めて反対を表明した。
これに対して日鉄は「この買収は、USスチールを支え、成長させるとともに、米国産業界、米国国内のサプライチェーンの強靭化、米国の国家安全保障を強化するもの」とし、投資や技術導入、雇用維持などの方針をあらためて示した。
買収資金について、森副会長は「エクイティファイナンスも含め選択肢。あらゆる手段の中で最適な手段を選択する」と述べ、今年度から来年度にかけて行うとした。ただ、エクイティファイナンスを選択した場合でも、株式が大幅に希薄化することはないと述べた。
<中国からの鋼材輸入、即時の対応必要>
中国からの鋼材輸出に関しては、各国が流入を阻止する通商政策を打ち始めている。中国は年間1億トンの鋼材を輸出しており、これは、日本の内需5100万トンの2倍近くになる。中国の内需は年間1億トンずつ減っていくと想定されており、3年経つと輸出は2億トンに拡大する懸念もあるという。
森副会長は、各国が通商の壁を作り自国を守ると、行き場をなくした鋼材が日本に土石流のように流れ込むと指摘。日本の中の健全なサプライチェーンが破壊されると危機感を示し「即座にシャットアウトするくらいの対応が今の日本では必要。もう時間があまりない」と強く訴え、鉄鋼連盟としても政府に働きかけているとした。
インタビューは3日に実施しました。