アングル:日銀、追加利上げへ地ならしか 身構える市場
12月2日、日本経済新聞が週末に配信した植田和男総裁インタビューを受け、市場で12月利上げを織り込む動きが加速している。写真は日銀本店。昨年9月撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)
[東京 2日 ロイター] - 日本経済新聞が週末に配信した植田和男総裁インタビューを受け、市場で12月利上げを織り込む動きが加速している。7月の利上げ後に市場の混乱を招いたことから、日銀内では、コミュニケーション戦略の必要性を意識する声があった。12月会合まで1カ月を切る時点での発信に市場では、追加利上げへの地ならしとの見方も出ている。
<2年金利、08年以来の0.6%台>
インタビューで植田総裁は追加利上げの時期について「データがオントラックに推移しているという意味では近づいている」との認識を示した。これを受けて週明け2日の市場では債券が売られて金利が上昇。政策金利の影響を受けやすい新発2年債の利回りは2008年11月以来となる0.6%台に乗せた。為替市場でも円高が進行、一時149円半ばをつけた。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは今回の総裁インタビューについて「利上げに向けたコミュニケーションを図っている」とみている。
関西みらい銀行のストラテジスト、石田武氏は「日銀がタイミングを選べた中、あえて12月の政策決定会合まであと3週間というタイミングで、きちんと設定したインタビューで意図的にこうした情報発信をしてきた」と指摘。「これはもう利上げ予告だと受け止めて良いのではないか」との見方を示す。
SBIリクイディティ・マーケットの金融市場調査部長、上田真理人氏は「日銀は12月会合での追加利上げに意欲を持っている印象。ただ、市場では6割程度しか織り込みが進んでおらず、疑心暗鬼のようだ」と指摘する。
7月の追加利上げの際は、弱い米経済指標に加え、日銀のタカ派姿勢が想定外との受け止めで株安、円高が進行。この市場波乱について、植田総裁は9月の会見で、日銀の考え方が伝わってなかったという批判があることは承知しているとして、「経済・物価に関する認識と政策運営に関する考え方を丁寧に説明してくということに心がけたい」とコミュニケーションに配慮する姿勢を示した。
日銀は8月以降、政策判断にあたっては金融資本市場や海外経済の状況を確認する「時間的余裕がある」との表現を使ってきたが、10月の決定会合後の会見で植田総裁は「時間的余裕」という表現は今後使わないことになると思うと発言。この発言後のロイターエコノミスト調査では12月追加利上げ予想が過半数となった。
<今年2回目のインタビュー>
日銀内では足もとの経済・物価情勢について、総裁発言通り、オントラックとの見方が多い。一方で、米国経済の不透明感に加え、国内消費の弱さなどについて懸念する声もある。
市場では今回の総裁発言は追加利上げに前向きなものとの受け止めが多いが、「連続的に追加利上げを実施するとか、政策金利を1%の到達点より上げていくといったタカ派傾斜を示唆するものではない」(SMBC信託銀の山口真弘投資調査部長)との見方もあり、午後にかけては再び円安となり、株価も上昇した。
今回の植田総裁インタビューのタイミングについて日銀広報課では「これまでも各紙によるインタビューに総裁は応じている」とし、「前回は今年4月に実施された」としている。