ニュース速報

ビジネス

AIIB、「中国共産党が支配」との主張に反論 疑問の声も

2023年07月08日(土)00時52分

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)のグローバル広報責任者だったカナダ人のボブ・ピカード氏がAIIBは「中国共産党に支配されている」と批判して辞任した問題で、AIIBは7日、ピカード氏の主張を裏付ける証拠は見つからなかったとの内部調査結果を公表した。写真は北京のAIIB本部前で2020年7月撮影(2023年 ロイター/Tingshu Wang)

[北京 7日 ロイター] - アジアインフラ投資銀行(AIIB)のグローバル広報責任者だったカナダ人のボブ・ピカード氏がAIIBは「中国共産党に支配されている」と批判して辞任した問題で、AIIBは7日、ピカード氏の主張を裏付ける証拠は見つからなかったとの内部調査結果を公表した。

同氏は6月、AIIBが共産党員に支配され、「有害な文化」が生まれているとしてツイッターで辞任を表明。AIIBは当時、根拠のない主張だと反論していた。

AIIBは世界銀行など西側主導の機関に代わる多国籍金融機関として中国の習近平国家主席が2016年に設立。カナダなど106カ国が加盟している。ピカード氏の主張については、カナダも独自調査を開始した。

AIIBは「AIIBのガバナンス構造が、非政治的、建設的で均衡の取れた、コンセンサス重視の意思決定文化を育むため、意図した通りに機能していることが内部調査で確認された」と表明した。

また政党に所属していることが職務の遂行に支障をきたしたという証拠はなかったと主張した。

ピカード氏が他の職員について共産党に所属していると言及したのは1件のみだったとし、これは別の職員とのインスタントメッセージのやり取りで、ある職員の能力を疑問視したものだったと説明した。

「ガバナンスや方針、戦略の議論や決定に政治的な影響が及んだという疑惑はこれまで1度もない」と結論付けた。

AIIBの金立群総裁は今年、AIIBが政治的な争いに巻き込まれることはないと発言した。

ピカード氏はロイターのコメントの要請に応じ「報告書は不誠実で不正確だ。AIIBにおける共産党の影響力という核心的な懸念を真剣に調査したとは思わない」と話した。

金総裁にこうした懸念を伝えたところ、金氏は「(ピカード氏を)保守派からかばったために党の急進派から攻撃されている」と述べたという。

ピカード氏は報告書について「検証可能な誤りも含まれている」と指摘。カナダ国民としての身の安全について懸念を表明した電子メールに触れていないことがその一つと語った。

一方、AIIBのダニー・アレクサンダー副総裁はロイターのインタビューで、ピカード氏の主張は根拠がないと指摘した。

AIIBの中国政府との関係を問われると「ステークホルダーとして中国とは直接関係がある。それは英国やカナダも同じだ」と述べ「カナダをAIIBの重要なメンバーだと考えている。カナダの独自調査の結果を楽しみにしており、末永く協力したいと考えている」とした。

カナダ政府はコメント要請に応じ、「カナダ財務省は、今回提起された疑惑とAIIBへのカナダの関与について、ただちに調査を実施している。この調査は継続中だ」とした。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CPI、2月前年比+2.8%・前月比+0.2% 

ビジネス

ポルシェ、関税で値上げも コスト削減へ

ビジネス

車載電池ノースボルト、スウェーデンでも破産申請 欧

ワールド

トランプ氏の書簡、近くイランに到着=外相
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    スイスで「駅弁」が完売! 欧州で日常になった日本食、…
  • 6
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 7
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 8
    トランプ=マスク独裁は許さない── 米政界左派の重鎮…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 4
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 5
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中