ニュース速報

ビジネス

アングル:米GM、国内でのEV生産拡大に慎重姿勢 内燃車の収益性重視

2023年02月03日(金)19時09分

 1月31日、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は四半期決算発表に際し、国内での電気自動車(EV)の生産拡大を慎重に進める方針を示した。写真は2022年9月、デトロイト自動車ショーでGMの車に乗り込むバイデン大統領と、案内をするメアリー・バーラCEO(右、2023年 ロイター/Kevin Lamarque)

[デトロイト 31日 ロイター] - 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は1月31日の四半期決算発表に際し、国内での電気自動車(EV)の生産拡大を慎重に進める方針を示した。メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は米EV大手テスラや米フォードよりもゆっくりとしたペースで北米でのEV生産に取り組む方が長期的にはより収益性が高いことを重視しているようだ。

GMの2025年までの生産計画に詳しいサプライヤーは、GMが内燃機関の大型ピックアップトラックやSUV(スポーツタイプ多目的車)から利益を獲得し続ける一方、EVについては今後も投資と生産を徐々に進めるという経営方針を支持している。

米調査会社オートフォーキャスト・ソリューションズ(AFS)が収集したデータによると、GMの米国、カナダ、メキシコの工場でのEV生産は23年がわずか17万台で、24年が28万5000台。25年も50万台以下で、実際の生産能力100万台の約半分にとどまる見通しだ。

AFSのサム・フィオラニ副社長は、「GMは米金融業界からハイテク企業と見なされる必要があり、EVの将来性に言及すれば株価の支えになることは理解している。しかし依然として経営の柱はV8エンジンを積んだ大型ピックアップトラックとSUVで、この分野が利益の大部分を生み続けている」と述べた。

AFSによるとGMが今年内に発売する新型EVは4車種で、このうちピックアップトラックは1車種、SUVは3車種。24年にはさらにEV4車種を発売するが、大半は25年まで生産台数が比較的少ない水準にとどまる見通し。

GMは31日、22年から24年前半までに北米で計40万台のEVを生産するというこれまでの計画を堅持。バーラ氏とポール・ヤコブセン最高財務責任者(CFO)はアナリスト向け電話会議で、この40万台のほとんどは今年後半から生産される予定だと説明した。

GMは25年までに北米で年100万台のEVを製造するのに必要なバッテリー材料を全て確保したと説明した。テスラは今週、年200万台の生産を支えるために36億ドル(約4680億円)を投じてネバダ州のバッテリー工場を拡張すると発表した。

<バッテリー工場>

GMは韓国のバッテリー大手LGエナジー・ソリューションズと共同で米国に3カ所のバッテリー工場を建設中で、バーラ氏はさらに多くが必要になると述べた。しかし4カ所目の国内バッテリー工場の計画をいつ進めるかについては言及を避けた。

GMとは対照的にフォードは30日にSUV型EV「マスタング・マッハE」の価格を最大8%引き下げる計画を発表し、23年末までに年60万台のEVを販売するとの目標を改めて示した。フォードは以前、マッハEの北米での生産台数を23年中に13万台まで引き上げるとの目標を打ち出している。

フォードは今年秋までに電動ピックアップトラック「F─150ライトニング」の生産能力を年15万台に拡大する方針。

短期的にみれば、GMはEV生産の拡大を慎重に進める戦略によってテスラが今月初めに仕掛けた価格競争を回避することができる可能性がある。投資家は31日にGMの経営方針と強気の業績予想を支持したもようで、GMの株価は7%余り上昇した。

バーラ氏は「GMCハマー」のピックアップとSUV、「キャデラック・リリック」、「シボレー・シルバラード」ピックアップなどGMの新型EVの受注は好調だと指摘。アナリスト向け電話会議では、これらの車種への関心の強さから、設定価格は非常に適切だったと述べた。

バーラ氏とヤコブセン氏は、全体としてGMは今年、値引きを回避するために内燃機関式とEVの全車両の在庫を新型コロナのパンデミック前よりもはるかに引き締めるよう努めると述べた。ヤコブセン氏によるとGMは今年、米国のディーラーの在庫を50─60日分とし、19年の平時より20―30日分減らす計画。

GMの最新型EVの生産は増加のペースがゆっくりだ。昨年の納車はキャデラック・リリックが122台、ハマーのピックアップが854台に過ぎない。

GMCブランドの責任者のダンカン・アルドレッド氏は30日、EV式ハマーSUVの生産が今週始まったと明らかにした。高性能のハマーEVには9万台の予約が入っており、来年にかけて完売するという。

(Joseph White記者、Paul Lienert記者)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、洪水対応で3億ドル緊急援助 救助や被災者支援

ワールド

アングル:アサンジ氏釈放、背後に豪政府の静かな外交

ワールド

ベトナム、第2四半期GDP伸び率は前期上回る見通し

ワールド

中国に抗議以上の対応必要、南シナ海問題でフィリピン
MAGAZINE
特集:小池百合子の最終章
特集:小池百合子の最終章
2024年7月 2日号(6/25発売)

「大衆の敵」をつくり出し「ワンフレーズ」で局面を変える小池百合子の力の源泉と日和見政治の限界

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍部隊を引き裂く無差別兵器...米軍供与のハイマースが禁断のクラスター弾を使った初の「証拠映像」がXに
  • 2
    「大丈夫」...アン王女の容態について、夫ローレンス卿が語る
  • 3
    衛星画像で発見された米海軍の極秘潜水艇「マンタレイ」は、中ロに対抗する無人の自律型ドローン
  • 4
    「悪名は無名に勝る...」売名の祭典と化した都知事選…
  • 5
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地.…
  • 6
    白昼のビーチに「クラスター子弾の雨」が降る瞬間...…
  • 7
    傷ついて「帰国」したハイマース2台、ロシアにやられ…
  • 8
    貨物コンテナを蜂の巣のように改造した自爆ドローン…
  • 9
    アルツハイマー病の症状を改善する治療法が発見された
  • 10
    ワニの襲撃で男性が腕を失う...発見者が目撃した衝撃…
  • 1
    「何様のつもり?」 ウクライナ選手の握手拒否にロシア人選手が大激怒 殺伐としたフェンシング大会
  • 2
    偉大すぎた「スター・ウォーズ」の看板...新ドラマ『アコライト』を失速させてしまった「伝説」の呪縛
  • 3
    スカートたくし上げノリノリで披露...米大物女優、豪華ドレスと「不釣り合い」な足元が話題に
  • 4
    アン王女と「瓜二つ」レディ・ルイーズ・ウィンザーっ…
  • 5
    ロシア軍部隊を引き裂く無差別兵器...米軍供与のハイ…
  • 6
    韓国観光業界が嘆く「中国人が戻ってこない」理由
  • 7
    「大丈夫」...アン王女の容態について、夫ローレンス…
  • 8
    貨物コンテナを蜂の巣のように改造した自爆ドローン…
  • 9
    電気自動車「過剰生産」で対立するG7と中国──その影…
  • 10
    8人負傷のフィリピン兵、1人が「親指失う」けが...南…
  • 1
    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に
  • 2
    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア
  • 3
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間
  • 4
    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…
  • 5
    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 6
    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…
  • 7
    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…
  • 8
    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…
  • 9
    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 10
    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中