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基礎的財政収支、低成長が継続なら10年後も赤字=内閣府試算
1月21日、内閣府は、国と地方の財政収支の見通し「中長期の財政に関する試算」を経済財政諮問会議に提出した。写真は2019年10月、都内で撮影(2021年 ロイター/Peter Cziborra)
[東京 21日 ロイター] - 内閣府は21日、国と地方の財政収支の見通し「中長期の財政に関する試算」を経済財政諮問会議に提出した。政府は2025年度の基礎的財政収支(PB)黒字化目標達成を掲げているが、現状の潜在成長率が続く場合、30年度でも国内総生産(GDP)比1.6%程度の赤字が残る見通しで、10年後においても黒字化は達成できない。実質2%・名目3%の高成長を前提にすれば、前回同様29年度に黒字化する見通しとしている。
PBは、社会保障関係費や公共事業など毎年の歳出(除く国債費)と税収など歳入との差額で、財政健全化の目安となる。
内閣府は年に2回、今後10年程度のPBの推移などを盛り込んだ経済財政見通しである「中長期の経済財政試算」を経済財政諮問会議に提出している。高めの潜在成長率を前提とする「成長実現ケース」と、足元までの成長率を前提とする「ベースラインケース」の2パターンを提示してきた。今回は新たに10年後の2030年度まで見通しに入れた。
財政状況は、新型コロナウイルス感染症に対応するための補正予算による歳出増や、感染症の影響などを背景とした経済の下振れによる歳入の鈍化から一時的な悪化は避けられないが、試算では、中長期でみればそれほど影響はないとみている。前回見通しと比較しても、その後の感染拡大長期化にもかかわらず22年度以降の成長軌道はほとんど変えていない。
実質成長率のシナリオは、今年度は前回のマイナス4.5%からマイナス5.2%へと深い落ち込み見通しに変えているが、21年度はその分の反動増を大きく見積もり4%成長を見込んでいる。名目GDPが概ね600兆円に達する時期は、感染症の経済への影響を見極める必要があるものの23年度ごろと、前回試算時と同じ年次を予想。
消費者物価上昇率は、24年度以降に2%程度に達すると見込む。
黒字化目標年次の25年度PBも、潜在成長率並みのベースラインケースでは成長実現ケースでは対GDP比で2.1%の赤字見通し、成長実現ケースでは1.1%程度の赤字見通しで、こちらも前回から変えていない。
国・地方の公債等残高は20年度に対GDP比216%まで上昇するが、30年度にはベースラインケースで208.1%程度、成長実現ケースでは168.5%まで安定して低下していくシナリオとなっている。
(中川泉 編集:田中志保)