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三菱重社長「戦闘状態のもや晴れてきた」、新中計で火力・MRJ再構築
[東京 8日 ロイター] - 三菱重工業<7011.T>が8日発表した2020年度を最終年度とする中期経営計画(国際会計基準)では、前回中計で未達だった連結売上高5兆円を再び目指し、事業利益3400億円、純利益1700億円を狙う。不振の火力発電事業では人員3割削減や生産体制見直しなど構造転換を図る。債務超過に陥っているジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の開発子会社には今年度中に資本増強を実施する。
宮永俊一社長は会見で、再び目標とした売上高5兆円は「企業の成熟度、歴史、今後の成長方向、製品ミックス、総資産とのバランス」などすべてを考慮して判断した数字だと説明。ターボチャージャーやフォークリフトなど既存事業で「4兆6000億円くらい」は見込めるとし、M&A(合併・買収)など新規投資で4000億円を積み増す考えを示した。
4000億円を投じる具体的な案件は「頭の中にある」として詳細な言及は控えたが、既存事業を伸ばすために必要なM&Aが必要だとし、「これまでは長期回収型の投資をやり過ぎていた。これからは収益に対して即効性のある投資をやりたい」と述べた。
宮永社長は2月の決算会見で、現状を「戦闘状態」にあると表現したが、3カ月経った今でも「戦闘状態だが、(全体で)少しもやが晴れてきた。MRJはかなり晴れつつある。火力もいくつかの方向性がはっきりしつつある」と話し、「戦闘態勢がそれほど長くなることはない」と構造転換に自信をみせた。
火力事業では、21年以降の石炭火力の需要減に備え、同年以降に人員を約3割減らす方針。国内では配置転換や採用抑制などで20%、海外では拠点再編で10%減らす。また、ガスタービンは高砂工場(兵庫県高砂市)、蒸気タービンは日立工場(茨城県日立市)、ボイラーは長崎工場(長崎市)と国内1工場に1製品と集約して効率化を図る。
MRJについては開発の遅れにより、量産初号機の納入が5度延期となり、開発費が膨らみ、MRJの開発子会社、三菱航空機(愛知県豊山町)の債務超過額が18年3月期末で約1000億円と前の期から倍増している。宮永社長は、資本増強方法の詳細は控えたが、「今年度中に」資本増強を行い債務超過を解消すると語った。20年半ばの初号機納入の厳守に向けて財務基盤を強化する。
同社はMRJの開発費を公表していないが、累計での開発費は約6000億円を超えたもようだ。同社によると、開発費は18年度がピークで、その後20年度にかけて減少するという。また、開発資金はすべて自己資金でカバーしており、全社のフリーキャッシュフローは黒字を維持し、有利子負債も過去最低水準にある、としている。
同日発表した17年度の連結決算(日本会計基準)では、営業利益が前年比16%減の1265億円だった。従来は同19.6%増の1800億円を見込んでいたが、一転して減益となった。売上高は同5%増の4兆1108億円、純利益は同19.6%減の704億円だった。前の中計での数値目標も下回った。インダストリー&社会基盤部門で将来リスクに対する引き当て処理を行ったほか、MRJの開発加速に伴い研究開発費が増加したことなどが響いた。
(白木真紀)