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焦点:日産が新型リーフでテスラに攻勢、電池の不満拭えるか

2017年09月07日(木)18時19分

 9月6日、日産自動車は「リーフ」の新型車投入で盟主の座を守る構えだ。写真は千葉で同日撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[千葉市 6日 ロイター] - 世界各国の環境規制強化で電気自動車(EV)に追い風が吹く中、日産自動車<7201.T>はEV「リーフ」の新型車投入で盟主の座を守る構えだ。

EV市場は新興の米テスラが台頭、他社も開発や投入を急ぐなど競争激化は必至。先頭に立ってEVを推進してきた日産。今度こそ思い描く成長を遂げられるか、新型リーフでその力が試される。

<先発優位なるか>

「先駆者だったリーフはさらに進化した。日産のコアとなる実力を持った車だ」。西川廣人社長は6日、約7年ぶりに全面改良した新型リーフを誇らしげに初披露した。他社が懐疑的だったEVを日産は早くから次世代エコカーの本命と位置づけ、2010年末に投入したのがリーフだ。世界販売実績は累計約28万台。当初の想定通りには伸びてこなかったが、これまで世界でもっとも売れているEVだった。

ここ数年、EVで注目を浴びるのはもっぱらテスラだ。今までは1000万円超の高級EVを扱うテスラとは「顧客層が違う」と言い訳できた。だが、同社の最新作「モデル3」は価格が3万5000ドル(約380万円)から。富裕層でなくても手が届きやすくした。受注は50万台を超えており、リーフの累計販売台数を倍近く上回っている。

ダニエレ・スキラッチ副社長は「日産にはテスラなどにはない強みがある。(EVで)もっとも多くの顧客情報を持ち、84年という自動車開発の歴史がある」と対抗心を露わにする。たかだか創業15年ほどの企業には負けないと言わんばかりだ。

新型リーフは、旧型に比べ電池容量を1.3倍の40kWhとし、航続距離を日本基準で400キロと約4割延ばすなど性能を向上、自動運転技術など高機能も付加した上で価格を旧型と同水準に抑えた。長年集めたデータからユーザーの行動特性を分析。坂本秀行副社長は、コスト、重量、価格などの点も考慮し、対象顧客にとって「バランスの良い」スペックに仕上げたという。

<勝者の見極めは時期尚早>

三菱UFJモルガンスタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは「早くEVを出した、EVをたくさん売ってきたからといって現時点で必ずしもそのメーカーが勝つとは限らない。そういう段階にまだない」とみる。EVはまだバッテリー(電池)や充電インフラなどに課題が多く、儲けも出にくいとし、勝者の見極めは「多面的にみないといけない」と慎重だ。

「日産は先行してきただけの経験がある。データやノウハウを蓄積しており、(後発企業との)差は大きい」とSBI証券の遠藤功治シニアアナリストは指摘する。ただし、今後の技術革新によっては品質や価格競争力が後発と「大きく逆転することはありうる」。

米国ではカリフォルニアなど10州で18年型モデルから環境規制を強化。走行中に排出ガスを出さないEVなどの販売が求められる。英仏政府もガソリン・ディーゼル車の販売を40年までに禁止する方針を打ち出し、世界最大市場の中国は18年以降に一定量のEV販売を義務づける規制を導入する予定。

米ゼネラル・モーターズは昨年、EV「シボレー・ボルト」を発売。独フォルクスワーゲンは25年までにEV30車種以上を投入、世界販売の20―25%に相当する200万―300万台を計画する。スウェーデンのボルボも19年以降は全車種をEVやハイブリッド車(HV)などの電動車にする。

トヨタ自動車<7203.T>は昨年末にEV開発組織を新設、19年ごろの中国での生産を検討中だ。マツダ<7261.T>とEVの共同開発も進める。初の量産型HV「プリウス」開発責任者だった内山田竹志会長は8月のイベントで、HVは「電動化技術全ての要素を持っている」とEV開発にも自信をみせた。

<電池劣化と対応への不信、低い中古車価格>

リーフには中古車価格の低さも影を落とす。複数の旧型リーフ購入者が電池の劣化、その結果短くなる航続距離への不満を口にしており、日産の電池修理・容量保証サービスも「不誠実」との声が多く上がる。

ある男性ユーザーは「リーフ以上に楽しい車に出会ったことはない」というが、同時に「電池の劣化に苦しめられ、保証の面で日産に裏切られた思いが強い」とも訴える。そうした声が中古車価格にも影響し、「中古車価格は他の車に比べて飛びぬけて低い。買うなら中古。新車で買うつもりはまったくない」と言い切る。

日産の坂本副社長は新型リーフの電池の寿命について「初期型に比べると飛躍的に上がった。容量減少、性能低下は半分以下に減ってきている」とし、旧型で起きた問題は新型では解決できるとみている。セルの劣化がすぐ判明できるシステムも開発したという。

EV需要拡大に伴い、現在主流のリチウムイオン電池に使われるコバルトなど制約のある電池の素材コストがかさむ懸念も出ている。坂本副社長は、素材調達も戦略を立てており、性能向上も実現できるよう材料構成を変える研究開発なども進めており、「あらゆる将来に向けて成果が出るよう手は打っている」と話している。

電池の性能向上は各社共通の課題。トヨタが航続距離や充電時間、容量などを大幅に改善できる全固体電池を開発中だ。他社で大きな技術革新が起きれば、EV市場の勢力図が一気に変わる可能性がある。

*写真を更新しました。

(白木真紀 編集 橋本浩)

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