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金融庁の課徴金納付命令取り消し、増資インサイダーで=東京地裁
9月1日、インサイダー取引をしたとして金融庁から課徴金の納付命令を受けた都内在住の金融コンサルタントが、納付命令の取り消しを求めていた裁判で、東京地裁(林俊之裁判長)は原告の主張を認め、金融庁の命令を取り消す判決を言い渡した。写真は金融庁の看板、2013年11月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 1日 ロイター] - 企業の公募増資の情報を主幹事証券の社員から事前に得たうえで、インサイダー取引をしたとして金融庁から課徴金の納付命令を受けた都内在住の金融コンサルタントが、納付命令の取り消しを求めていた裁判で、東京地裁(林俊之裁判長)は1日、原告の主張を認め、金融庁の命令を取り消す判決を言い渡した。増資インサイダー問題に関連して、金融庁の課徴金納付命令が司法の場で取り消されるのは初めて。
証券取引等監視委員会は、金融コンサルタントが、2010年9月に東京電力の公募増資の発表前に、主幹事の野村証券の担当者(当時)から詳細を入手していたと認定。その情報をもとに東電株の空売りなどをしたとし、金融庁が2013年6月、6万円の課徴金納付を命じた。
しかし、金融コンサルタントは、当時は増資について多くのうわさが流れ、日時などを想像することは困難ではなかったなどと反論。増資に関する重要事実をもとにインサイダー取引をしていないとし、納付命令の取り消しを求めていた。
判決理由で林俊之裁判長は、インサイダー取引の引き金となったとされる野村からの情報について、公表前に東電が公募増資をすると決定したことや、それが9月29日に公表されるなどの内部情報を、野村の元社員が「知ったとは認められない」と指摘した。
金融庁は1日、「国の主張が認められなかったことは遺憾。判決内容を精査し、関係当局と協議の上、控訴も含めて対応を検討する」(幹部)としている。
一連の増資インサイダー問題をめぐっては、日本は企業の重要事実が漏えいしやすいと内外の市場関係者から指摘され、金融庁と監視委が、市場の信認を上げるために国内外の大手証券会社や運用会社を検査。2012年以降、大量に処分を行った。
国内の金融機関は金融庁に公然と反論しない傾向がある。しかし、一部の個人や外資系運用会社などは、監視委の事実認定などに異論を唱え、処分取り消しなどを求める裁判が複数、継続している。
(江本恵美、取材協力:和田崇彦)