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焦点:日銀、追加緩和の是非議論へ シナリオ維持に自信の声も

2016年07月26日(火)20時04分

 7月26日、日銀(写真)は28、29日に開く金融政策決定会合で、足元の物価の基調の下振れや不安定な金融市場の動向を踏まえ、追加金融緩和の必要性を議論する見通し。3月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai/File Photo)

[東京 26日 ロイター] - 日銀は28、29日に開く金融政策決定会合で、足元の物価の基調の下振れや不安定な金融市場の動向を踏まえ、追加金融緩和の必要性を議論する見通し。現時点では、政府による大規模な経済対策も反映し、先行きの物価が目標とする2%に向かって上昇率を高めていくシナリオは維持できるとの声が多い。

ただ、世界経済にはリスク要因も多く、日銀は追加緩和の是非を慎重に検討していくとみられる。

日銀は2017年度中に物価が目標とする2%に達すると見込んでいる。ただ、目安としている生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)は、今年5月に前年比0.4%下落と3カ月連続のマイナスとなっている。

日銀が物価の基調を反映する指数として重視しているコアCPIからエネルギーも除いた消費者物価指数(日銀版コアコアCPI)は、5月に同0.8%上昇と2カ月連続で上昇幅が圧縮された。

企業や家計のインフレ期待を表す指標も低下、足元の物価の基調は日銀の想定よりも弱めで推移している。

さらに英国の欧州連合(EU)離脱決定を受け、世界経済の先行き不透明感が増しており、金融市場は不安定な動きを続けている。

このため日銀は、当面の物価の基調が鈍い動きになることは避けられないとみており、次回会合では、足元で下振れ傾向をみせる物価の基調を下支えする観点からも、追加緩和の必要性があるかどうかが議論になる見通しだ。

政府の経済対策に平そくを合わせた追加緩和によって、期待を高める効果を指摘する声もある。

仮に追加緩和を決断した場合の手段については、現行の枠組みの下で、国債買い入れの増額が軸になるとみられるが、上場投資信託(ETF)やマイナス金利幅の拡大を含めて組み合わせが選択されるとみられる。

先行きについては、政府が8月2日に閣議決定する予定の大規模経済対策の効果によって、経済・物価が押し上げられるという点が期待されている。

現段階で具体的な規模は明らかになっていないものの、事業規模20兆円超、国と地方の財政支出は当初予定の3兆円超から上積みされる見通し。

黒田東彦総裁は24日、中国・成都での記者会見で、29日の決定会合後に公表する新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」には「経済対策の効果についても、当日までに利用可能な情報に基づいて織り込むことになる」と明言した。

来年4月に予定されていた消費増税の再延期も、経済対策と合わせて経済成長を支援し、需給ギャップの改善を通じた物価の押し上げ要因になるとみている。

また4月時点と比べ、ドル円で107円から104円前後まで円高が進み物価を下押しする一方、原油価格はドバイ産が1バレル35ドルから40ドル程度へ上昇し、円高による物価下押しを一定程度相殺すると試算している。

このため展望リポートで示すコアCPI見通しは、焦点となる17年度が4月に示した前年比1.7%上昇から小幅の下方修正にとどまる見込み。対策の影響が残る18年度は同1.9%上昇から大きな変化はない見通しで、2%の達成時期は現行の「17年度中」から大幅な後ずれは避けられそうな情勢。

政策判断はギリギリまで市場動向などを見極めるが、現時点で日銀内では、物価の基調を支える所得から支出への前向きな循環メカニズムが維持されているとの見方が多い。

ただ、政策維持の場合には、市場変動が大きくなるとの予測が市場では広がっており、そうした市場変動が企業や家計に与える心理的な影響も含め、最適な政策を選択するための議論が展開されそうだ。

(伊藤純夫 竹本能文 編集:田巻一彦)

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