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日銀の17年度物価見通し、1%台半ばに下方修正の可能性=関係筋

2016年03月31日(木)19時11分

 3月31日、日銀が4月28日に公表する展望リポートで、2017年度の物価見通しを現在の1.8%から1%台半ばへ下方修正する可能性が浮上している。複数の関係筋が明らかにした。写真は日銀、2月撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter)

[東京 31日 ロイター] - 日銀が4月28日に公表する展望リポートで、2017年度の物価見通しを現在の1.8%から1%台半ばへ下方修正する可能性が浮上している。複数の関係筋が明らかにした。

年初来の急激な円高や想定よりも低めの賃上げなどが主な要因。マイナス金利政策の効果や米利上げ動向次第では、2%の物価目標達成時期も従来の17年度前半から後ずれさせる可能性もあり、景気・物価シナリオを多角的に点検していく。

<円高・株安で前提急変>

日銀の展望リポートでは、9人の政策委員による消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)の見通しの中央値を公表している。政策委員が見通しを試算するに当たり事務方がさまざまなシミュレーションを行い、その上で各委員が独自の分析や政策観を勘案して見通しを練り上げる。

現下の課題は1月に決定したマイナス金利政策の影響と、年初来の急激な円高・株安の影響度合いをどのように織り込むかだ。

特に為替は、今年1─2月にドル/円が120円近辺から112円前後へと円高方向にシフトした。

日銀は1月の展望リポートで、為替が2年半先の物価まで影響を与えるとの分析を公表しており、これに沿えば、年初の7%程度の円高進行が18年半ばまで相応の影響を与えることになる。

<ベア伸び率低下も物価押し下げ>

さらに株価の乱高下や円高は、企業収益の鈍化などを通じ、国内の設備投資の抑制要因にもなる。春闘のベースアップのプラス幅が現時点で0.4%程度と15年度の0.6%を下回ったことも響く。

コアCPIがゼロ%程度で低迷を続ける中で、期待インフレ率の高まりもうかがえない。

このため日銀内では、単純計算で16年度や17年度の物価が円高で0.2━0.3ポイント程度押し下げられるとの試算が出ている。日銀内では、ベアが企業の物価観(期待インフレ率)の表現と受け止める見方もあり、ベア低下がコアCPIを0.1ポイント程度押し下げるとの試算もあるもようだ。

これらを合わせると単純計算で、16年度の物価見通しが従来の0.8%から0.4━0.5%、17年度が1.8%から1.4━1.5%に押し下げられることになる。

一方、マイナス金利政策の効果をどう見るのかも課題になる。日銀は金利低下が設備投資を促し、実体経済にプラスと効果を強調している。

ただ、海外経済の減速が明確になる中で、企業の設備投資を刺激する効果が不透明になっているとの見方も、ここにきて一部で出ているもようだ。

現時点で日銀は、日本経済の緩やかな成長に伴い、物価が2%に向けて上昇していくシナリオは堅持している。展望リポートの見通し期間最終年度である18年度には、物価が2%程度に達しているシナリオを維持する意向だ。

(竹本能文 伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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