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バーゼル委の金利リスク規制、資本積み増しと監督対応の両論併記へ=関係筋
4月3日、バーゼル委の金利リスク規制は、資本積み増しと監督対応の両論併記になる可能性が高まっている。写真は国際決済銀行、2010年9月撮影(2015年 ロイター/Christian Hartmann )
バーゼル委の金利リスク規制、資本積み増しと監督対応の両論併記へ=関係筋
[東京 3日 ロイター] - バーゼル銀行監督委員会(バーゼル委)が議論を進めている銀行の金利リスクに対する新たな規制案について、同委が公表する予定の市中協議案は、1)資本の積み増しを求める規制、2)従来通り各国の監督対応──の両論併記となる可能性が高まった。複数の関係筋が明らかにした。
規制のあり方をめぐる各国間の議論がまとまらないためで、結論は先送りになりそうだ。
バーゼル委は今年3月に本会合を開催し、4月に公表する予定だった銀行の金利リスクに対する新規制の市中協議案を議論した。
だが、金利リスクに対応して自己資本を積み増す新規制を導入するよう求める英国やドイツと、自己資本の積み増しではなく各国金融当局による監督対応に任せるべきとする日本や米国との間で意見が対立。溝が埋まらないまま、合意に達しなかった。
複数の関係筋によると、当初予定から作業が遅れており、遅くとも今年6月の本会合までに結論を取りまとめようと調整が行われている。
議論の過程では、金利リスク量が自己資本の20%超える金融機関(アウトライヤー銀行)に限定して、資本積み増すべきとの妥協案も出ている模様だ。
ただ、水面下で続けられている事務協議でも歩み寄りは見られておらず、市中協議案は資本賦課と監督対応の両論併記になる可能性が高いという。
関係者の一人は、「現状のままでは一本化で合意を得るのは難しい」と語った。
銀行が持つ金利リスクは、金利の上下によってどれだけ損失を被るかで計られる。長期の貸出金になるプロジェクトファイナンスや住宅ローンなどはリスクが高くなるほか、国債などの運用商品のリスクも含まれている。
さらに、調達構造の違いによっても、リスクが上下する仕組みだ。
バーゼル委は、世界的に低金利環境が続く中、将来の金利上昇リスクが高まっているなどとして、より厳格に銀行の金利リスクを補足する必要があると判断。これまで議論を進めてきた。
自己資本積み増しによる対応となった場合には、邦銀はこれまで注力してきた海外プロジェクトファイナンスなど長期の貸出金や、国債保有にも影響が出かねないとして懸念を深めている。
日本の金融当局も、より柔軟な運用が可能な監督上の対応が望ましいとの立場だ。
ただ、自己資本による対応が見送られ、引き続き当局による監督対応となった場合でも、バーゼル委は、各銀行の金利リスクを横並びで比較できる標準的なリスク量の計算方法を導入するなどして、金利リスクに対する透明性を高めるなどの新たな対応策を取り入れることも検討中だ。
邦銀は、金利リスクに対するより厳格な対応を求められることになりそうだ。
複数の関係筋によると、2016年3月までに最終文書を取りまとめ、結論を導くことが予定されている。市中協議案の両論併記で、最終的な着地がどうなるのか、もうしばらく時間が経過しないとはっきりしない情勢となっている。
(布施太郎 取材協力:伊藤純夫 編集:田巻一彦)