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インタビュー:大手行、十分な自己資本確保=全国銀行協会会長

2015年04月01日(水)00時45分

 4月1日、全国銀行協会会長に就任した佐藤康博・みずほフィナンシャルグループ社長が、ロイターのインタビューに応じた。写真は香港で1月撮影(2015年 ロイター/Bobby Yip)

[東京 1日 ロイター] - 4月1日付で全国銀行協会会長に就任した佐藤康博・みずほフィナンシャルグループ<8411.T>社長は、ロイターとのインタビューで、国際的な銀行規制の議論は残っているものの、邦銀大手行は十分な自己資本を確保しており、配当引き上げなど株主還元や成長機会獲得を狙った買収などを経営戦略として考えるステージが続くとの認識を示した。

バーゼル銀行監督委員会(バーゼル委)などで議論が進む銀行規制の動きについては、リスク回避の動きが過度になっており、貸し渋りなどを引き起こしかねないとの懸念を示した。

主なやり取りは以下の通り。

――バーゼル委などの銀行規制の行方をどうみているか。

「(貸出債権や政策保有株式などの)信用リスクに対する評価方法の見直しは、直接的に大きな影響が出る可能性はある。まだ議論されている最中で、中身をどのように変えるかによって影響度は変わるが、今出ている市中協議案の内容であれば、相当な制約を金融機関に課す可能性が出る。金融界全体としても、これはやり過ぎだという話が出ている」

「もう一つの銀行勘定における金利リスク(IRRBB)の取り扱いでは、いわゆる投資勘定と銀行勘定で持っている金利リスクを同列に扱うという議論がされている。これは、考え方としては相当ずれている」

「銀行の仕事は、預金を集めて運用することだ。証券会社がやっているトレーディングと同じように規制するとなると、金融の仲介機能そのものを減殺することになる。銀行の本質的な問題に対する挑戦だ。銀行界として大きく反論していかないといけない」

――規制の霧は晴れていないということか。

「確かにまだ霧はかかっているが、昨年秋には(世界の巨大銀行を対象に新たに設けられる自己資本規制である)『総損失吸収能力(TLAC)』も出され、まったくクリアになった。そういう意味では、視界は大分晴れたと言っていい」

――邦銀は自己資本を使える環境なのか。

「邦銀の大手行は、すでにバーゼル委が求める自己資本規制の水準を超えており、不確定要素を加えても、超過資本の状態だ。自己資本を使って、引き続き配当を上げるのか、自己株消却するのか、買収に使うのか。こういう課題に、経営陣がウエートを置く状況は続くだろう」

「大手行だけで言えば、一定の持続的な配当性向をベースに経営するという様にシフトされてきた。IR(投資家への情報提供活動)で海外投資家に説明すると『日本の銀行もようやくそこまできたか』となってきている。もう一つはROE(株主資本利益率)だ。だんだん市場の目線が配当からROEに移ってきており、そこに対応していく動きが出ている」

――日銀の異次元緩和をどのように評価するか。

「基本は、インフレマインドになってきている。しかし、超金融緩和からどのようにエグジット(出口)するかという巨大な問題は残る。それを除けば、現在の日銀の考えは正しいと思う」

*このインタビューは3月18日に実施しました。

(布施太郎 編集:田巻一彦)

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