ニュース速報

ビジネス

東電、再値上げ回避での黒字継続を模索=広瀬社長

2015年02月16日(月)06時54分

 2月16日、東京電力の広瀬直己社長は、ロイターなどのインタビューで、柏崎刈羽原発が再稼働しない場合でも、電気料金の再値上げを回避しながら黒字継続を実現する「プランB」の準備を進める考えを示した。14日撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 16日 ロイター] - 東京電力<9501.T>の広瀬直己社長は、ロイターなどのインタビューで、柏崎刈羽原発が再稼働しない場合でも、電気料金の再値上げを回避しながら黒字継続を実現する「プランB」の準備を進める考えを示した。

同社長は、収益体質が「筋肉質になっている」と手応えを示し、再稼働と値上げがない場合でも、金融機関からの資金調達で不測の事態が生じないよう注力していくと説明した。

3年11カ月前に発生した福島第1原発事故により経営破たん危機に陥った東電は、民主党政権(当時)の判断で、2012年7月に1兆円の公的資本を受け、実質国有化された。5兆円超の事故被害者への賠償金の支払いで政府から資金援助を受ける一方、金融機関から支援を受けながら電力事業を継続している。

上場民間企業としての経営形態を継続している東電が、金融機関の支援を継続的に得るには黒字定着が条件。13年度に修繕工事費の先送りを主因に3年ぶりに経常黒字化し、14年度は追加のコスト削減策が功を奏し前年比2.2倍の連結経常利益2270億円を見込む。

<「筋肉質」を強調>

広瀬社長はインタビューで、昨年度と今年度に一部コストを先送りしながら黒字を捻出してきたことについて、「やりくりには限度があるし、サステーナブル(持続可能)ではない。柏崎刈羽が動かないと(経営は)相当厳しい」と述べ、原発再稼働が経営安定には不可欠との考えを改めて強調した。一方で「経営合理化策は相当やっていて、筋肉質になっているのも事実」と述べた。

東電経営陣はかねて、2012年度以来、原発事故発生後で2度目となる電気料金値上げは極力回避したいとの考えを強調しており、15年は1年間、値上げを見送る意向を昨年1月に表明した。一方、柏崎刈羽原発の再稼働は15年度中でも厳しいとみられている。

インタビューで広瀬氏は、値上げなし、再稼働なしで3年連続黒字が可能かどうかについて、「まだ軽々に申し上げられない」と述べた。ただ、火力発電燃料費を押し下げる原油価格の下落が、「短期的には(収支に)多少有利な面があるかもしれない」と話した。

東電は15年度中に2800億円を新たに調達する必要がある。広瀬氏は、金融機関の理解を得るには、経営の持続可能性を示すことが必要だと強調する。原子力規制委員会の審査を受けている原子炉2基(6、7号機)が稼働すれば、燃料費削減効果が「ひと月300億円」と説明。収支改善の切り札である再稼働実現が、金融機関からの与信獲得に最も効果的との認識を示した。

とはいえ、同6、7号がいつ規制委の審査に合格するのかめどは立っていないうえに、地元新潟県の泉田裕彦知事は、福島原発事故の「検証と総括」が実現しない限り、柏崎刈羽の再稼働は認めないとの厳しい姿勢を貫いている。

泉田知事は、今年1月に広瀬社長の訪問を受けた際にも「原因究明に後ろ向き」と指摘するなど、態度を軟化させる気配をみせない。

<合理化、金融機関の理解得られるか>

広瀬氏は、15年度中の原発再稼働か料金再値上げ判断の二者択一を金融機関に迫られるのかどうかについて、「コストダウン、合理化の取り組みも当然評価いただけると思う」、「AかBか決めつけると経営としての自由度が難しくなる。何とも言えない」などと述べ、粘り強く交渉していく考えを示唆した。

泉田知事の理解など原発再稼働への道筋をどうつけるのかについて、広瀬氏は、同知事の諮問委員会である「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」の審議に対応することなどで理解を進めるとしている。

広瀬氏は「まだまだ、我々の努力が足りなくて、新潟に届いていないのかもしれないが、質問や疑問にしっかり答えていく」などと語った。

(浜田健太郎 編集:宮崎大)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ大統領、多面外交推進の意向 欧米協調も継続

ワールド

レバノンでまた一斉爆発、ヒズボラ無線機 14人死亡

ワールド

英、ロシア大使呼び出し抗議 モスクワ駐在の英外交官

ワールド

イスラエルは1年以内にパレスチナ占領終結を、国連が
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁断の韓国ドラマ」とは?
  • 2
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 3
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS攻撃の衝撃シーンをウクライナ無人システム部隊が公開
  • 4
    「トランプ暗殺未遂」容疑者ラウスとクルックス、殺…
  • 5
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 6
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 7
    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…
  • 8
    米大統領選を撤退したのに...ケネディJr.の色あせな…
  • 9
    【独占】ゴルフ場でトランプを撃とうとした男はウク…
  • 10
    英国で「最も有名な通り」を、再びショッピングの聖…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 4
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 5
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 6
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁…
  • 7
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 8
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 9
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将…
  • 10
    世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何な…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 5
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 8
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 9
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中