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ビール大手3社揃って増益計画、キリンに回復の兆し見えるか注目

2015年02月12日(木)19時11分

 2月12日、ビール大手3社が発表した2015年12月期決算では、揃って営業増益見通しとなった。写真はキリンの「ラガー」など各社の商品、2014年7月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 12日 ロイター] - ビール大手3社が12日に発表した2015年12月期決算では、揃って営業増益見通しとなった。ただ、ビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)の総市場は漸減が見込まれる中で、全社増加計画を打ち出すなど、計画達成は容易ではない状況。

特に、14年12月期に19.8%営業減益と大きく落ち込んだキリンホールディングス <2503.T>は、再成長に向けて、新体制で臨むことになるが、回復の兆しが見えるかどうか注目される1年となる。

<キリン、ビール類のシェア低下に歯止めを>

キリンHDの三宅占二社長は12日の決算会見で「国内ビール類シェアのダウントレンドは何が何でも止める」と、強い口調で語った。

2014年は6.0%減と大きく落ち込んだ国内ビール類飲料の販売数量は、0.4%増と増加を狙う。

2014年キリンビールのシェアは33.2%となり、大手4社のなかで唯一シェアを落とした。これに伴い、14年12月期のビール類を含む日本総合飲料は22%の大幅営業減益となった。販売数量減に加え、ブランド強化のための投資や販売費の増加が影響している。

2015年12月期の連結売上高は同3.4%増の2兆2700円、営業利益は同2.1%増の1170億円で、3期ぶりの増益計画とした。トムソン・ロイターのスターマイン調査がまとめたアナリスト14人の営業利益予測平均値は1276億円。

三宅社長は15年を「次期中計の再成長に向けての重要な1年」と位置付けた。ビール類でシェア低下に歯止めをかける一方で、中長期をにらんだブランド投資は継続。日本総合飲料は21%減益と減益が続くものの、海外事業や医薬・バイオケミカルでカバーする計画。

建て直しを図っているブラジルキリンについては、販売数量は前期並みを見込む中、価格アップとコスト効率向上により、収益性を高める方針。また、シンガポールの飲料大手フレイザー・アンド・ニーヴ(F&N)との資本関係を解消したが「F&N後、東南アジアでパートナー探しができていない。東南アジアでも良い機会があれば成長投資したい」とした。

一方、医薬・バイオケミカルは、協和発酵キリン <4151.T>が昨年買収したアルキメデス社の通年寄与などが見込まれる。

<新体制で臨む>

キリンHDは、3月末の株主総会を経て、三宅占二氏から磯崎功典氏へと社長が交代する。これに先立ち1月からは、布施孝之氏がキリンビール社長に就任している。「有事の人事」(布施社長)とも言われた新体制で、復活に向けた道筋を描くことになる。磯崎氏は「キリンが復活できるかどうかは今後数年の取り組みにかかっている」と話しており、今年はその第一歩となる。

同社は、2013年初めに発足した中間持ち株会社の「キリン」が国内飲料3社を統括し、親会社のキリンHDが海外戦略に特化する体制をとっていたが、双方ともに情報が入りにくくなったり、意思決定が遅れる要因になったと分析。新体制では「事業持ち株会社に近い形に戻し、一体で経営する」とした。

<アサヒは5期連続で最高益更新へ>

アサヒグループホールディングス <2502.T>は、15年12月期の連結営業利益が前年比5.2%増の1350億円になるとの見通しを発表した。5期連続での最高益となる。高級ビールの「ドライプレミアム」が好調なほか、ウイスキーの販売増などで国内酒類の増益を見込むほか、飲料、食品、国際の全事業で増益となる見通し。年間配当は3円増の48円を予定している。

トムソン・ロイターがまとめたアナリスト13人の営業利益予測平均値は1363億円。

連結売上高は同3.6%増の1兆8500億円の見通し。国内ビール類飲料の販売数量は前年比0.1%増の1億6340万ケースを計画しており、市場全体でマイナスが予測されるなか、スーパードライブランドや新ジャンルの「クリアアサヒ」などの伸長を見込む。15年は、ビール類以外でも、洋酒やワインなどの拡大も図る。

奥田好秀取締役は、今年の消費見通しについて「価値があるものにはお金を使うというのは事実。4月以降は賃上げの効果も実感できる状況になり、暖かさとともに、消費も回復するとみている」とした。

14年12月期の連結営業利益は同9.2%増の1283億円となった。2年連続でビール類が販売増となったほか、テレビドラマの好影響もあり、ウイスキーが拡大。この結果、酒類事業は2.8%増益となった。

<サッポロ、構造改革を実施へ>

サッポロホールディングス <2501.T>は15年12月期の連結売上高が同5.2%増の5457億円、営業利益が同10.7%増の163億円になるとの見通しを公表した。ビール類は4期連続で販売増を計画しているほか、競争激化が緩和される北米やベトナムでの売り上げ拡大も見込んでいる。

トムソン・ロイターがまとめたアナリスト6人の営業利益予測平均値は182億円。

当期利益は、酒税追加納付の影響がなくなることから、前期の3億円から80億円へと大幅増になる。特別利益として、固定資産売却益75億円を計上する一方で、79億円の特別損失を計上。各事業において、構造改革を実施する予定にしている。

14年12月期の連結売上高は前年比1.7%増の5187億円で5期連続の増収となった。また、営業利益は国内外で販促費が増加したため、同4.0%減の147億円となった。

プリン体ゼロ商品の「極ゼロ」を巡って追加納税116億円(延滞税1億円)を計上しており、当期利益は3億円にとどまった。同社は、社内検証により「極ゼロ」が新ジャンルであることが確認できたとし、国税当局に対して、還付を求めている。

(清水律子)

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