サウジ当局は9.11テロに関与したのか、20年目の捜査資料が語ること

犠牲者追悼式典に出席したバイデン夫妻とオバマ夫妻ら CHIP SOMODEVILLAーPOOLーREUTERS
<同時多発テロから20周年。開示されたFBIの資料が示すサウジ治安機関とアルカイダの関係についての「状況証拠」>
アメリカの大統領は常に前任者の問題に巻き込まれるのを避けたいと願うものだ。バイデン大統領は就任に当たり、20年に及ぶ「テロとの戦い」に終止符を打つ決意を固めていた。
米軍は8月30日、多くの批判にもかかわらずアフガニスタンからの撤退を完了。そして12日後の9月11日、アメリカはウサマ・ビンラディン率いる国際テロ組織アルカイダによる9.11同時多発テロ事件の発生から20周年を迎えた。
この日の夜、サウジアラビア政府がこの事件の実行犯を支援した可能性に関するFBIの機密捜査資料が開示された。バイデンは一部の犠牲者遺族の要求を受けて、この資料の開示を約束していた。
しかし、情報活動の世界ではよくあることだが、開示された機密情報の内容は不満の残るものだった。この資料は、アメリカのテロ対策当局が20年前から主張してきたことを追認しただけだったからだ。
アメリカで活動するサウジの情報部員らしき人物3人が事件の前年、ハイジャック犯2人と繰り返し接触していた──これ自体は憂慮すべきことだが、サウジ政府がテロに関与していた、あるいは計画を事前に知っていたことを示す直接的な証拠はない。
サウジによる世界史上最大の宣伝工作
実際、サウジの関与については曖昧な部分が残っている。過去40年間のイスラム過激派の台頭に、サウジ政府が多くの責任を負っていることは間違いない。1979年、聖地メッカの大モスク占拠事件とイラン革命に危機感を募らせたサウジは、厳格なイスラム教ワッハーブ派との結び付きを強化した。80年からの20年間にサウジがワッハーブ派の布教に費やした金額は750億ドル。世界史上最大の宣伝工作だ。
その結果、ワッハーブ派に触発された過激な不寛容主義が何百万人ものイスラム教徒の間に広まり、何千人ものイスラム教徒が宗教上の義務としてのテロリズム、つまり暴力的なジハード(聖戦)を実行するようになった。多くのサウジ人も異教徒の欧米諸国や、自国を含むイスラム圏の世俗的な政府に対する敵意を強めた。
9.11テロのハイジャック犯19人のうち、15人がサウジ国籍だった。アメリカの同盟国であるサウジ政府がテロリストを支援していたのではないかという報道は、事件発生の直後からあった。
こうした情報から、事件の被害者約3000人のうちの一部の遺族は2003年、サウジ当局がハイジャック犯を支援したと主張。王室を含む関係者の処罰と彼らによる補償を求めてサウジ政府を提訴した。もちろん、サウジ政府はこの主張を全面的に否定。ビンラディンはアメリカよりもサウジ政府に敵意を持っていたことを指摘した。
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