コラム

高市早苗氏の政策・世界観を分析する──「保守」か「右翼」か

2021年09月10日(金)11時59分
高市早苗

2021年自民党総裁選挙に出馬表明する高市氏(9月8日) Kim Kyung-Hoon-REUTERS

1.稲田氏から高市氏への「交代」

2021年9月8日、自民党総裁選に正式出馬を表明した高市早苗氏が、所謂保守界隈やそれに付随するネット右翼(以下、保守界隈など)から瞬く間に「総理・総裁待望論」として期待の星になった直接的嚆矢は、菅総理が総裁選不出馬を表明する「前」の『文藝春秋』(9月号,2021年8月10日発売)での出馬意欲披瀝と、それにまつわる報道であることは間違いはないものの、そこに至るまでには重大な伏線があった。

まず第二次安倍政権下で「初の女性総理・総裁」候補として保守界隈から大きな期待を集め、入閣した稲田朋美氏が後にリベラル色を強くしたことである。2006年に設立された保守系議員の勉強会「伝統と創造の会」の会長を務めた稲田氏(顧問・安倍晋三氏)が「選択的夫婦別姓容認」に転換したため、この会から分離する形で2020年6月に「保守団結の会」が結成された。同12月、安倍前総理が顧問に就き高市氏が入会。このようにして保守界隈の熱量が稲田氏から離れたのと入れ替わるように、界隈の中での「初の女性総理・総裁」候補は急速に稲田氏から高市氏に交代するのだった。

2.サナエノミクス(経済)

HANADA.jpeg

月刊『Hanada』2021年10月号 (筆者撮影)

総裁選出馬に合わせ、高市氏は月刊『Hanada』(2021年10月号)、月刊『正論』(同年10月号)に登場する。特に「我が政権構想」と題した『Hanada』での記載は、高市氏の政策を分析する上では極めて重要である。高市氏は靖国神社参拝の意義を高らかと強調した後、新型コロナ対策を述べているが、まず無難な範囲である。

特徴的なのは「日本経済強靭化計画」と銘打たれた経済政策であり、所謂安倍路線を継承して金融緩和を継続しつつ、PB(プライマリーバランス)規律を凍結して大規模な財政出動を行う旨、明示されている。しかしながら高市氏は、2006年に小泉内閣が退陣して"第一次安倍内閣"となるや、自身のWEBサイト上のコラムに、


今後、「経済成長と歳出削減を両立させながら、財政を健全化し、就業支援や職業教育などで納税者を増やすことで持続可能な福祉社会を築こう」という安倍新総裁の方向性は間違っていないと思います。(小泉政権の足跡と次期政権への期待 2006年9月20日)

として、寧ろPB規律を守ることを良としており、即ちこの間にPB規律に対する考え方が変わったのであろう。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

スクエニHD、通期純利益予想を上方修正 10-12

ワールド

インドネシアGDP、25年は5.11%増 22年以

ビジネス

日経平均は続落、半導体関連株が押し下げ 決算は支え

ビジネス

日鉄、今期の最終赤字700億円に拡大へ 安価な中国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 4
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 5
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 6
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 9
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 10
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story