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関東大震災時の朝鮮人虐殺を否定する動きを憂う
1923年の関東大震災で燃え尽きた路面電車 Everett Collection-Shutterstock
<歴史的事実として認められた事件でも、日本人の加害性を否定しようとする傾向に拍車がかかっている>
2023年の9月1日は、関東大震災からちょうど100周年の日になる。関東大震災は、地震や火災により10万人もの犠牲者を出した一方で、朝鮮人を中心とする、多数の人々に対する虐殺が行われた。その犠牲者は6000人ともいわれる。
しかしこの節目の年に至るまでの数年は、朝鮮人虐殺事件について意図的に風化させたり事実をねじ曲げようとしたりする動きが拡大した時期でもあった。また、朝鮮人虐殺だけでなく、公共の場から日本の負の記憶を排除するニュースが最近は相次いでいる。今こそ、元ドイツ大統領ヴァイツゼッカーの「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」という言葉を思い出すべき時だろう。
小池百合子都知事の追悼文見送り問題
2016年に就任した小池百合子都知事は、2017年以降、それまでの都知事が行ってきた9月1日の朝鮮人追悼式典に追悼文を送るのを取りやめている。関東大震災の慰霊大法要で全ての震災被害者を追悼しているという理由によるものだが、自然災害ではなく明確な意図をもって行われたジェノサイドの犠牲者であるという性質上、朝鮮人虐殺は震災による被害者とは別に扱われるべき特別性があるはずだ。都知事は朝鮮人虐殺の歴史を認めるかどうかについて、直接的に明言することを避けており、虐殺を否定したいか、少なくとも過小評価する意志があるとみられても仕方がない。
この小池都知事のスタンスに合わせてか、東京都ではこの朝鮮人虐殺に触れることを忌避するような動きが広がっている。2022年には、「東京都人権プラザ」の企画展で上映される予定だった美術家の飯山由貴氏の映像作品が、「朝鮮人虐殺を『事実』と発言する動画を使用することに懸念がある」という理由で上映中止に追い込まれた。企画展のテーマは精神疾患であり、朝鮮人患者が出てくる映像作品の中で、関東大震災の朝鮮人虐殺に触れるシーンがあった。そこが問題視されたのだ。しかし「懸念」も何も、流言飛語によって多数の朝鮮人が虐殺されたという、当時から多数の目撃証言があり、それらをまとめた学術研究も複数存在している歴史事件を事実として言及することに何の憚りがあるだろうか。しかもこの通達を出したのがよりによって東京都の人権部であるという、笑えない冗談のような事態が東京都で起こってしまっているのだ。
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