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アイヌ文化をカッコよく描いた人気漫画「ゴールデンカムイ」の功罪
「ゴールデンカムイ」(C)野田サトル/集英社
<北の大地で繰り広げられる壮大なアドベンチャーを通じて「アイヌ文化への関心を高めた」と政府も評価する漫画や回顧展に潜むプロパガンダ>
『週刊ヤングジャンプ』で連載されていた野田サトルの人気漫画「ゴールデンカムイ」が4月28日に完結した。漫画の完結に先駆けて、実写映画化が発表され、また雑誌発売直後から6月末まで、「ゴールデンカムイ展」が東京ドームシティで開かれている。
漫画の舞台は日露戦争後の日本。アイヌが隠したという金塊を求めて、元日本軍人の青年とアイヌの少女が様々なキャラクターと協力あるいは敵対しながら、北海道やサハリンを旅するというもの。登場する個性豊かなキャラクターの人間ドラマや、作中で紹介されるアイヌの食文化なども人気となり、ベストセラー作品となった。
しかしSNSでは『ゴールデンカムイ』の実写化や展覧会などのイベントや漫画の最終回に対して、アイヌの歴史についての無理解さが露呈していると厳しいコメントが相次いでいる。その中には当事者であるアイヌもいる。北海道地方の先住民族であるアイヌの歴史は和人による差別の歴史でもあり、たとえエンターテイメントのフィクションであっても、そうした歴史への視座は問われる。
迫害をチャラにした最終回
『ゴールデンカムイ』という漫画は、連載中はアイヌに差別的であるという批判はほとんどなかった。専門家の監修を受けていることもあり、文化描写はしっかりと取材されていた。和人によるアイヌ迫害も部分的に扱われている。作品テーマの一つがアイヌの権利獲得運動であることも間違いはない。そもそも物語の鍵となっている金塊は、和人による迫害に対抗するためアイヌが集めたものとされているのだ。
批判されたのは、作者が最終回で示した、「アイヌ問題」への解決方法だ。作中でアイヌが最終的に獲得したものは、国際的に認められているような一般的な先住民族の権利からはほど遠い過小なものであり、また現実のアイヌの権利獲得運動の要求ともかけ離れたものだった。それにも拘わらず、物語では差別的な現状が?肯定的に扱われており、またそうしたことが達成できたのには和人の協力もあった、と強調されていたのだ。
さらに「ゴールデンカムイ展」では、作中で登場したようなアイヌの文化財と、旧日本軍の軍服や持ち物がフラットに並べられており、迫害の歴史が抹消されている。北海道に置かれていた第七師団は作中では主人公たちの敵役であるものの、魅力的な敵として描かれておりファンも多い。しかし一方で第七師団は、かつて屯田兵としてアイヌの土地を奪い、後には「満州」に派遣され、中国人の土地を奪うことに加担した歴史がある。そうした歴史を無邪気に消費していいのか、という疑問も持たれている。
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