コラム

日本の「お家芸」に勝算あり?...アメリカ一強の宇宙ビジネスで「日本が勝つ」方法

2024年11月27日(水)17時01分

資産運用会社レオス・キャピタルワークス最高投資責任者 藤野英人氏

資産運用会社レオス・キャピタルワークス最高投資責任者 藤野英人氏(「お金のまなびば!」より)

「特化」「小型化」を軸とした隙間産業に日本の勝機がある?

藤野氏は「今からスペースXに追いつくだけの衛星を打ち上げたり、日本独自の衛星通信網を開発したりすることは多分不可能だろう。これは日本だけじゃなく、中国、ロシア、イギリスなど、どこの国でもおそらく難しい」と指摘。

だからといって、全く将来性がないわけではない。藤野氏によると、今後の宇宙ビジネスで大きなテーマとなるのが「特化」と「小型化」だ。

「宇宙事業が大きく広がる過程で隙間産業が出てくるため、日本の情報技術、ものづくりの技術が生かされる可能性が高い。隙間と言っても、全体が大きくなれば巨大な産業になるかもしれない」

例えば超小型衛星の開発が世界で進められているが、「小型化」は日本のお家芸だ。より安く、より小さく、より高精度な衛星が、今後の宇宙利用において中心的役割を果たすと考えられている。

「特化」の一例は、人工衛星やロケットがミッション遂行中に放出した部品や、衝突などにより発生した破片を指すスペースデブリ(宇宙ごみ)の関連事業。

放っておくと事故や墜落の危険性があるため、日本でもスペースデブリ除去サービスを提供するベンチャー企業が登場し、新規上場を果たしている。

また、トヨタ自動車(※)は宇宙事業に積極的な姿勢を見せており、JAXA(※)と共同で月面探査車「ルナクルーザー」の開発に取り組んでいる。「自動車部品や半導体製造装置、電子部品など、日本の産業はこれからさまざまな形で宇宙ビジネスに関与することになる」と藤野氏は予測する。

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、レバノン北部のシリア国境を初空爆 輸送

ワールド

停戦合意発効、おおむね順守 レバノン南部に避難者戻

ビジネス

仏国債スプレッド、ユーロ圏債務危機以来の幅に拡大 

ビジネス

ECB、漸進的に中立金利まで向かうべき=シュナーベ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 5
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 6
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 7
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 8
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言でき…
  • 9
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 10
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story