コラム

過去30年、日本で株価が上昇したのはオーナー系企業だった(為末大×藤野英人)

2021年12月23日(木)19時20分
為末大×藤野英人

「お金のまなびば!」より

<優秀な人は四半期で成績を出すが、投資において、ひとつの重要な基準は時間軸。それはスポーツや人生においても同様で、その上でもうひとつ、「勝ち筋」を見つけるのに必要な「力」がある>

元陸上競技選手で400mハードル日本記録保持者である為末大氏は、現在は実業家としても活動している。特に最近は、スポーツ領域で起業した若者に出資したり、相談に乗ったりすることにやりがいを感じていると話す。

成功しそうな人や物、会社を探し、将来を託すという点において「それはまさに投資だ」と、ひふみ投信シリーズのファンドマネージャー、藤野英人氏は指摘する。YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」で、2人は投資とスポーツ、人生について語り合った。

藤野氏は投資で大切なことについて、「経営者の情熱や目線を見ること。会社の規模は関係ない」と言う。

では、「経営者を見て投資する」とは具体的にどうすることなのか。ひとつの基準は、その経営者が持つ時間軸だ。

過去30年間で株価が上昇した企業を見ると、上位に食い込んだのはほとんどが経営者一族が株式を多く所有する「オーナー系企業」だという。オーナー系企業の経営者は、社員から昇格した「サラリーマン経営者」に比べて、中長期的な視点で経営にあたることがひとつの要因だと藤野氏は分析する。

「優秀な人は四半期できちんと成績を出す経営をするので、時間軸が短い。一方、社長に就任した当初は陰口を叩かれていたような2世・3世の場合、10〜20年先もその会社が続くことを考える。両者は意思決定の時間軸が全く違う」

時間軸が短い経営者は投資をしない。なぜなら、結果が出るまでに何年もかかるからだ。しかし、10~20年会社を継続させるためには投資が不可欠のため、長いスパンで見ると成長していたのはオーナー系企業だったというわけだ。

fujino20211223-tamesue-1-2.jpg

「お金のまなびば!」より

「勝ち筋」が見える人と見えない人では何か違うのか

投資だけでなく、スポーツの世界でも時間軸は重要だと為末氏は言う。

「インターハイでチャンピオンを輩出できる学校と、オリンピック選手をたくさん輩出する学校はイコールではない。前者は3年間で結果を出す指導法、後者は10年後にピークを迎える指導法であることがその違いだ」

10年後に選手として完成するためには、技術を覚えるよりもたくさん走り込みをさせる指導法がよいそうだ。そんな為末氏は中学時代、「練習量は少なめで100mに特化した練習」をしていたという。

しかし、高校生になり伸び悩んだ。世界大会で100mを9秒台で走る選手を目の当たりにして、「絶対に勝てない」と思ったという。しかし、この挫折が、400mハードルに転身するきっかけとなった。

「400mハードルは海外の選手が苦手そうに走っていて、この競技はまだ洗練されていない、今やれば結果を出せるかもしれないと思った」

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story