コラム

「人類のサバイバルに寄与する」、イーロン・マスクが描く破壊的フィジカルバリューチェーン

2021年06月18日(金)17時00分
イーロン・マスク

火星に人を送り込んで居住可能にするというのも本気の目標...... REUTERS/Hannibal Hanschke

<イーロン・マスクは、フィジカルな世界での新価値創造に挑んでいるので、とてもハードルの高いが、一旦実現してしまえば、圧倒的な競争力を持つことになる>

現在デジタルの世界においてGAFAは強大なプラットフォーマーとして君臨している。時価総額だけで見ればデジタルを越えて全産業の中でもその存在感は圧倒的でもある。もちろん今後も彼らの成長は続くと予想されるが、超長期戦略の視点で考えると、次の10年にはデジタルだけでなくフィジカル領域をも巻き込んださらなる破壊的プラットフォーマー達が登場することが予想される。

すでにイーロンマスクの生態系は確実に構築されている

そしてその最右翼にいるのがテスラを中心としたイーロン・マスクの生態系だろう。一般的な日本人のイメージのイメージは、パナソニックの高性能蓄電池を並べてかっこいいEVスポーツカーを製造販売していて、最近はスペースXで民間宇宙ロケットも開発して前澤さんを月に連れて行ってくれる会社、ということになるかも知れないが、2008年にテスラロードスターのファーストモデルを発売してからわずか13年、彼が打ってきた布石は非常に多岐にわたる。

例えば、現在毎月150機以上の衛星が打ち上げられているが、今年の2月以降はスペースX社の衛星がその半分以上を占めていて、膨大な数のスターリンク衛星がすでに打ち上げられている。これは全世界をカバーする衛星ブロードバンド通信網を構築するためのものだ。

fujimoto0618b.jpg

(出所)「ロケット打ち上げ情報 予定計画と結果」宇宙技術開発株式会社

このように、すでにイーロン・マスクの生態系は確実に構築されている。元々パナソニックの畜電池を制御するソフトウェアこそが、テスラ社の最大のコアコンピタンスであった。そこから今では電池の自社開発もスタートし、自動運転も他社とは異なる独自の仕組みを開発し、そのためのAIも開発している。トラックの開発や地下トンネル、都市間交通のハイパーループ、全地球通信ネットワークとその広がりは壮大だ。

フィジカルな世界での新価値創造

以下の図(FPRCの坂野上席研究員作成)はイーロン・マスクの事業の俯瞰図だ。

Tesla0618b.png

テスラを中心とした事業群を書き出してみると、その間に多くの関係性が存在することがわかる。ある事業で開発した技術は他の分野の事業のコア要素となっている。また、分野は異なるものの、それらの事業には共通する特徴が見られる。

プロフィール

藤元健太郎

野村総合研究所を経てコンサルティング会社D4DR代表。広くITによるイノベーション,新規事業開発,マーケティング戦略,未来社会の調査研究などの分野でコンサルティングを展開。J-Startupに選ばれたPLANTIOを始め様々なスタートアップベンチャーの経営にも参画。関東学院大学非常勤講師。日経MJでコラム「奔流eビジネス」を連載中。近著は「ニューノーマル時代のビジネス革命」(日経BP)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBの金融政策修正に慎重姿勢、スロバキア中銀総裁

ビジネス

キンバリークラーク、「タイレノール」メーカーを40

ビジネス

米テスラの欧州販売台数、10月に急減 北欧・スペイ

ビジネス

米国のインフレ高止まり、追加利下げ急がず=シカゴ連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story