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ForeignPolicy.com 外交エディター24時
奇人カダフィ、イタリアの村を救う
リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ大佐のきてれつな言動は数え切れない。リビアの暦を組み換え、国際テロへの支持を公言し、国連安全保障理事会を「テロ理事会」と呼び、処女のボディガード隊とラクダ1頭を公式行事に同伴させ、国連にスイスという国を「廃止」するよう要求したことすらある。
この狂気じみた誇大妄想症の男が次に何をやらかすのか。驚くべきことに、それは行き当たりばったりの親切な行動だった。カダフィは、イタリアの貧しい小さな村を救うための計画を立てさせた。しかも利他主義と愛情のほかには何の動機もないかのように装っている。
山あいの古い村アントロドーコとカダフィとの運命的な出会いは、いわば一目ぼれだった。昨年、イタリア中部ラクイラで開かれたG8サミット(主要8カ国首脳会議)に出向いた際、カダフィは少し前に発生したマグニチュード6.3の地震でイタリア中央部のインフラが痛んでいることを恐れ、訪問団に迂回するよう命じた。
迂回した結果、経済的に困窮しているアントロドーコを通ることになった。人口2800人のこの町で、カダフィは温かく歓待された。感激のあまり彼はこう言ったという。「あなたがたは私の心の中に入ってきた。私は決して忘れない」
■ホテルやスポーツ施設の建設を約束
帰国するとすぐ、カダフィはローマ駐在のリビア大使ら高官を同町に派遣。高級ホテルやミネラルウォーター工場、スポーツ施設を建設するほか、観光や雇用を支援することを約束した。こうした計画を1週間かけて双方が話し合うことになった。
カダフィの車列がイタリアの名もなき山あいの村で停車し、華やかなリムジンの奥から、床ほどの広さのマントと刑事ドラマ『マイアミ・バイス』ばりのスーツをまとった彼が、アントロドーコを救う正義の味方として登場する──そんな場面を想像するのは難しい。
もっとも、若くて美しい女性500人をローマでの集まりに招待し、イスラム教の経典コーランを全員に渡して改宗させようとしたことも、事前に想像することは難しかった。参りました、大佐。あなたは私たちをまた驚かせてくれましたね。
──シルビー・スタイン
[米国東部時間2010年06月21日(月)15時37分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 23/6/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
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