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ForeignPolicy.com 外交エディター24時
中東一の愚か者、シリア
Zohra Bensemra-Reuters
シリアが移動式弾道ミサイルのスカッドを、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの拠点に運び込んだ、または運び込みつつある、という疑惑をどう解釈したらいいのだろう。米オバマ政権が5年ぶりに駐シリア大使を復活させようと努力していた矢先のことだ。
まずは不可解だ。こんな挑発的なことをすれば、イスラエルに攻撃されるかもしれない。なぜそんな危険を冒すのか。アメリカのスパイ衛星の助けがあれば、イスラエル空軍は簡単にスカッドを破壊できるだろう。シリアの防空システムをかいくぐって空爆を成功させるイスラエル軍の能力は、07年にシリアの核施設らしき場所を破壊したときに証明済みだ。テロ組織にスカッドのような危険な武器を渡したことがはっきりすれば、国際的にも厳しい糾弾を受けることになる。
シリアはよく、06年のレバノン侵攻でヒズボラがイスラエル軍に対して善戦したことを吹聴する。だがバシャル・アサド大統領も実際は、彼の老朽化したソ連製武器が何の役にも立たないことや、自分の執務室がイスラエルのF15戦闘爆撃機の航続距離内に入っていることはよく承知しているはずだ。
シリアは何十年も、隣国レバノンを支配してきた。シリアの強大な軍事力についての報道も多い。だがその実態は、レバノン以遠には到底支配の及ばないチャチな独裁国家に過ぎない。
■独裁体制は奇妙な生き物
地域の勢力争いの観点から見れば、今回の軍事行動(まだ疑惑だが)もほんの少しだが理解しやすくなる。シリアの同盟相手でスポンサーでもあるイランは、アメリカとその同盟国がもしイランの核施設を攻撃すれば大きな代償を支払うことになると世界に示したがっている。国際的な制裁圧力も高まるなか、イランの権力者たちがアサドに何らかの助けを手助けを頼んだことも考えられなくはない。
だがこの件で何より常軌を逸しているのは、シリアは西側に加わるほうがよほどトクになるということだ。イスラエルが占領しているゴラン高原も返ってくるかもしれないし、経済制裁も解除してもらえる。エジプトのように、独裁体制を温存しながら海外からの援助や投資を享受するのも夢ではない。考古学的・文化的に豊富な資源を生かせば、巨額の観光収入も見込めるだろう。
イランとの親密な関係を絶ち、武装組織を支援したりレバノンの内政に介入するのを止め、イスラエルと名がつくものすべてを攻撃する態度を改めれば、険悪だった他のアラブ諸国との関係も改善できる。
だが独裁体制というのは奇妙な生き物だ。内部の人間にしかわからない理由で愚かな決断をすることも珍しくない。
──ブレイク・ハウンシェル
[米国東部時間2010年04月14日(水)19時37分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 15/4/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
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