コラム

EUの新大統領と外相はこの2人

2009年11月20日(金)15時52分

pass081109.jpg

新チーム発足 選出を受けて現EU議長国スウェーデンのフレドリック・ラインフェルト首相(中央)と共に会見を行ったヴァンロンプイ(左)とアシュトン(11月19日) Eric Vidal-Reuters


 EU(欧州連合)の初代大統領(欧州理事会常任議長)にベルギーのヘルマン・ヴァンロンプイ首相が選出された。同じく新設の外相(外交・安全保障上級代表)に選ばれたのが、イギリスの元上院議員で院内総務を務めたキャサリン・アシュトン欧州委員(通商担当)だ。

 2人の選出には、ヨーロッパに不可欠な「均整」という考え方が現れている。ヴァンロンプイとアシュトンは男性と女性、小国出身者と大国出身者、そして保守派とリベラル派だ。

 さらに一方は予想通りで、もう一方は予想外の人選だった。ヴァンロンプイは数週間前から新大統領の最有力候補に挙げられていた。アシュトンはイギリスとヨーロッパではそれなりに知られているものの、それ以外の地域では知名度が低く、外相就任はちょっとしたサプライズだ。

 BBC(英国放送協会)や他のメディアの報道によれば、ゴードン・ブラウン英首相は人選交渉の最終段階までトニー・ブレア元英首相を推薦していたという。しかしドイツを中心とする他の大国はヴァンロンプイ支持に回り、そちらが勝利した。ブラウンなどの社会民主主義派は、その代わりとしてアシュトンの外相就任を後押ししたという。

 最終的に、アシュトンのほうがヴァンロンプイ以上に興味深い人選といえる。アシュトンは何千人ものEU官僚と膨大な予算を管理し、EU政策の優先順位について決定権を持つことになる。そのため彼女の外交の仕事は、大統領以上に影響力の強いものになると私は思う。今のところヴァンロンプイがどんなスタッフを抱え、どんな役割を果たすのかはよく分からない。

 しかし彼女は適任なのか? 知名度に問題は? 反対する国はないのか? 確かに彼女は通商担当委員という重要な職にあるが、それも就任から1年しか経っていない。こうした疑問への答えと、大統領と外相がどれだけ影響力のある地位なのかは、来月アシュトンとヴァンロンプイが就任したときに明らかになるだろう。

 政治ブロガーであり、シンクタンク「アメリカ進歩行動基金センター」のウェブサイト編集者でもあるマット・イグレシアスはこの新チームと、その役職の重要性、さらにアシュトンの称号について優れた解説を行っている(彼女は「レディ・アシュトン」「バロネス・オブ・アップホランド」として知られるが、男爵(バロン)の地位を相続したのではなく、上院議員に就任したときにこの敬称を贈られた)。今後も興味深い情報があればここで書いていきたい。

──アニー・ラウリー
[米国東部時間2009年11月19日(木)14時47分更新]


Reprinted with permission from FP Passport,, 20/11/2009. ©2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story