コラム

中国覇権の背景に歴史捏造――ワシントン・シンポでも認識共有

2016年10月11日(火)16時20分

 今回はその「闇」が、どのように尖閣問題と関係しているかを解剖してみよう。

中国共産党の歴史捏造と覇権の関連性

 習近平政権は抗日戦争時代の「中流砥柱」(ちゅうりゅうしちゅう)(砥柱は黄河の中に柱のようにそそり立っている石で、激流の中でも微動だにしないことから、乱世にあっても毅然として節義を守っていること。闘いの中心、大黒柱)は中国共産党であると、声高らかに叫び続けている。そのため2015年には抗日戦争・反ファシズム戦争勝利70周年記念日に、建国後初めて軍事パレードを行ない、全世界に中国の軍事力をアピールしようとした。

 全国レベルの抗日戦争勝利記念日と反ファシズム戦争勝利記念日さえ、初めて行なったのは、1995年のことで、それ以前に行なったことはない。

 毛沢東時代(1949年~1976年)には、ただの一度も、いかなる形でも抗日戦争勝利記念を祝賀したことがないだけでなく、南京事件(中国で言うところの「南京大虐殺」)でさえ、教科書に載せることを禁止したほどだった。

 なぜか――。

 それは拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に詳述したように、日中戦争時代(中国では「抗日戦争」と称する)、毛沢東が率いる中国共産党軍は、日本軍とまともに戦わなかったどころか、日本軍と共謀していたからである。

 毛沢東の戦略は、あくまでも日中戦争中に国民党軍を弱体化させ、共産党軍を強大化させることにあった。これに関しては何度も書いているので、ここでは省略する。

 ところが、1989年6月4日に民主化を叫ぶ天安門事件が起き、1991年12月に世界最大の共産主義国家であった(旧)ソ連が崩壊すると、中国は連鎖反応による中共政権の崩壊を恐れ、1994年から愛国主義教育を始めた。

「中国共産党こそが日本軍を倒した」とする「抗日神話」を創りだし、1995年から全国的に盛大に抗日戦争勝利記念日を全国レベルで祝賀し、同時に、中国を「反ファシズム戦争で重要な役割を果たした国」として位置づけるようになったのである。

 この傾向は習近平政権になってから先鋭化し、昨年9月3日に挙行した中国建国後初の軍事パレードは、その象徴と言っていいだろう。

 あたかも自国が反ファシズムの先頭に立っていたように位置づけることによって、自国の軍事力を高めることを正当化している。「戦後秩序の維持」を、まるで「中華人民共和国」が形成したような錯覚を、国内外に広めているのである。

プロフィール

遠藤誉

中国共産党の虚構を暴く近著『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)がアメリカで認められ、ワシントンDCのナショナル・プレス・クラブに招聘され講演を行う。
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。

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