「先祖返り」する習近平体制
高瑜女史は、昨年8月にアメリカに本部を持つ中国語図書出版社が発表した「目下のイデオロギー事情に関する通報」と題された、中国共産党の内部通知の「漏洩」に関わったとされる。同通知の主な内容は、「西洋の憲政民主を持ち上げ、現代の指導や中国の特色ある社会主義政治制度を否定すること」「公民社会を持ち上げ、党による政治下における社会基礎を瓦解させようとすること」「新自由主義を持ち上げ、中国の基本的な経済制度を変えようとすること」「西洋の報道観を持ち上げ、中国における党によるメディア管理原則及びニュース出版管理制度に挑戦すること」など7点を「危険なもの」として取り上げ、警戒と除去を求めていた。習近平体制成立直後の昨年4月に下された通知であり、同体制の施政方針を単刀直入に示したものと見てよいだろう。
その結果、弁護士や学者、そしてジャーナリストが次々と捕まった。さらに今月中旬には広州の僧侶、聖観法師が「国家政権転覆扇動罪」容疑で逮捕されたことが明らかになっている。同法師もまた1989年当時、北京・天安門広場に集まった学生たちに呼応して民主活動に参加し、1年間入獄した過去を持つ。2001年に出家した後も天安門事件の犠牲者への済度儀式を主宰するなどして警察に追い出され、その後も(その死が天安門事件のきっかけとなった)胡耀邦の追悼準備を進めたかどで住職を追われている。今回の逮捕は武漢で法会を行っていた最中に警察がやってきて同法師と集まっていたネットユーザーを連行したという。
法律、メディア、そして宗教。明らかに社会主義にとってネックになる分野の人物ばかりが集中的に拘束されている。過去、治安維持体制を強化してきたと言われた胡錦濤・温家宝体制でもこれほど明白な取り締まりは行われなかった。その分、習近平体制とは時代を逆行するシステムであることは明らかであり、また庶民に意外観をもたらした胡錦濤・温家宝時代の親民路線はここで打ち止めになったといっていいだろう。今後少なくとも6月まで続くであろう厳戒態勢下で、さらにどのような犠牲者が出るのか。そしてそれが社会にどんなショックを与えるのだろうか。
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