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大人になった僕は「冒険の書」に固定観念を揺さぶられた

パックン(パトリック・ハーラン)が選ぶ「僕に夢と冒険を教えてくれた3冊」

2016年03月15日(火)06時13分
パックン(パトリック・ハーラン)

themacx-iStock.

挑戦する気持ちをくれた、子供のころの愛読書


(写真は上巻)

 子供のころ、家にはお金がなくて、ゲーム機どころかテレビもなかった。そのため、本を読みまくっていた僕の大好物が冒険もの。中でもマーク・トゥエインの『ハックルベリー・フィンの冒険』(邦訳・岩波書店)に特に心を打たれた。僕と同じ貧乏少年が自力で広い世界に挑むストーリーに共感しながら、喜劇作家だったトゥエインのユーモラスな文章にめいっぱい笑った。

 もちろん、少年時代に読んだときには気づかなかった点はたくさんある。ヘミングウェイやT.S.エリオットなども絶賛する、アメリカを代表する現代文学の傑作であることも、19世紀の社会を忠実に映しだしているため、人種差別的な表現にあふれる本であることも知らなかった。実は賛否両論の本だが、対して「教室で朗読すると黒人の生徒が傷つくから禁じるべきだ」という主張も「白人少年が世界で一番尊敬する人は脱走中の黒人奴隷である。差別概念を乗り越えるための最高のツールだ」という反論も当時は知らなかった。単純に読んで楽しかっただけ。

 最近読み直したら、未知の世界に挑戦したくなる懐かしい思いを久しぶりに味わえると同時に、いっぱい考えさせられた。少年のころ、冒険する気持ちをくれたこの1冊は、大人の僕に、自分の固定観念を再考するきっかけをもくれた。

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