アステイオン

日米関係

すでに「米軍基地化」が進んでいる自衛隊基地も...日本全土に存在する「基地問題」のリアル

2025年04月16日(水)11時02分
池宮城陽子(東京科学大学特別研究員)

すでに「米軍基地化」が進んでいる自衛隊基地もあるようだ。築城基地(福岡県)は、嘉手納基地の戦闘機訓練を受け入れているほか、新田原基地(宮崎県)とともに、有事の際に普天間飛行場に代わって米軍を受け入れることになっている。

築城基地周辺の自治体が、「沖縄の基地負担軽減」のための米軍再編に伴う基地負担を、再編交付金と引き換えに受け入れたためだ。再編交付金は、訓練が実際に行われた度合いに応じて自治体に払われている。

だが、「米軍基地化」によって、日米地位協定で取り締まれない米軍による騒音や事件・事故が起こるのではないか。基地周辺の住民の不安や懸念は強まっている。「沖縄の基地負担軽減」策が本土で新たな基地問題を生み出しているという、通常の報道では知り得ない「基地の現場」の実態だ。

また、基地に対して、賛成/反対のどちらか一方に立つわけではない各地の状況や、基地をめぐって存在する世代間の温度差を記しているところにも本書の特長がある。

こういった「基地の現場」の複雑な実情は、読者に基地問題の難しさを知らしめるものの、そのインパクトが問題への関心を喚起する。

東京にもまだある基地問題

基地問題は誰にでも起こりうる問題である。本書のこの指摘の重要性を、私は身をもって実感している。というのも、私自身が基地問題に直面しているからである。

現在の住まいは、10キロほど先にある横田基地(東京都福生市など)所属の軍用機の飛行経路下にあり、低空飛行している軍用機を頻繁に見かける。夜間には窓を閉め切っていても、軍用機が通過する際の騒音が嫌でも耳に届く。

横田基地には2018年から輸送機CV-22オスプレイが配備されており、事故を引き起こす可能性の高さを主な理由として、関係自治体に住む住民を中心にオスプレイの配備前から抗議活動が行われている。私が住む自治体でも、オスプレイが飛行経路を外れて飛行したことが問題になったことがある。

しかし、本書が指摘するように、日米地位協定では在日米軍の基地外での訓練に関する制限がない。そのため、飛行訓練はあくまで基地から基地への「移動」に過ぎないと米軍によって正当化されてしまう。

こうした事情ゆえに、飛行に関する自治体や住民からの要望が聞き入れられる可能性は低い。

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