アステイオン

日米関係

すでに「米軍基地化」が進んでいる自衛隊基地も...日本全土に存在する「基地問題」のリアル

2025年04月16日(水)11時02分
池宮城陽子(東京科学大学特別研究員)
CV-22B オスプレイ

東京都で撮影されたCV-22B オスプレイ


<日本国民の防衛・安全保障に対する危機意識は高まっていると言われて久しいが、基地問題についての国民的議論は盛り上がらない。突破口はどこにあるのか──>


国民の防衛・安全保障に対する危機意識

SNSを通じて、目を覆いたくなるような戦争の残酷さを、日本に居ながらリアルタイムで目の当たりにするようになったからだろうか。 2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻以来、防衛・安全保障に対する日本国民の危機意識はかつてないほど高まっていると言われる。

例えば、2022年11月に実施された内閣府の世論調査では、「現在の世界の情勢から考えて、日本が戦争を仕掛けられたり、戦争に巻込まれたりする危険がある」、もしくは「どちらかといえば危険がある」と答えた有権者の総数は、全体の86%に達した。

だが実は、2018年の世論調査の時点で既に、「危険がある」「どちらかといえば危険がある」と答えた者の数は85%に達していた。背景には、北朝鮮の核兵器開発問題や、中国の軍備拡大および日本周辺地域における活動など、深刻化する日本の安全保障環境があると考えられる。

いずれにしても、防衛・安全保障に対する日本国民の危機意識が、現在極めて高い状態にあることは間違いなさそうである。

危機意識の高さ=国民的議論の活発化?

ところが、国民の危機意識が防衛・安全保障問題に関する国民的議論を活発化させたかといえば、必ずしもそうではない。そのような状況を象徴するもののひとつが、基地問題だろう。

「基地問題は沖縄だけの問題」──たとえばそういった考えが、基地を抱える地域が直面する問題への関心を遠ざける原因になっているのではないか。

基地問題が沖縄だけの問題でないことは、山本章子・宮城裕也『日米地位協定の現場を行く―「基地のある街の現実」』(岩波書店、2022年)が明らかにしている。「基地の現場」の人々の声をありのままに記し、日本各地の基地問題を考えさせてくれる1冊だ。

本書は、日米地位協定において認められた特権によって、米軍が米軍基地のみならず全国各地の自衛隊基地でも訓練を行えること、そのため日本に住んでいればどこでも基地問題に直面する、もしくはその可能性があることを指摘する。

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