土居 今までにない画期的な所見だと思います。つまり、省庁をまたぐ組織横断的なデータのやり取りを霞が関はそもそもやりたがらないし、これまでやってきませんでした。
お互いが相互不可侵でデータの融通をしてこなかったのが、会計検査院の力でその垣根を取り払う1つの突破口になりました。
田中 制度上は省庁間で照会をかけることが可能ですが、より積極的に活用されるようになってくれればいいと思っています。
法人や個人事業者の受給額は100万円や200万円単位の話で、一個一個は小さく見えるかもしれない。しかし、トータルで見ると5兆5000億円(2020年度)にものぼります。ただし、件数が多い故に実地検査よりも、データ分析を活用するほうが適していると思っています。
土居 データを活用することは重要ですね。それでは、残りの4つ目と5つ目の目標とは何でしょうか?
田中 4つ目の目標は、国民目線で我々の社会的認知度を上げることです。会計検査院は憲法機関として国民のために活動していますが、業務の性質上、その対象が行政機関の改善にとどまり、仕事内容が国民の皆さんに伝わりづらくもあります。
検査報告が国会に提出されても国民の皆さんやメディアが注目しない限り、国会議員の方々の関心は必ずしも高まりません。ですから社会を変える力になるために世論を味方につけて国民目線で認知度を上げるということを目標に掲げました。
5つ目の目標は業務改革です。特に重要なのは検査結果の報告の時期を年1回から分散化・平準化することです。実はこれには我々の調査スケジュールや審議プロセスを根本的に見直す必要があり、また検査を受ける各役所の方々にも協力をしていただかなければいけないため一大改革です。
しかし、分厚い報告書を年に一度しか出さないことで、国会議員の方々やメディア、そして国民の皆さんの目に留まらないで漏れてしまう案件がたくさんあります。これは本当にもったいないことです。
土居 あの分厚い検査報告をメディアが報じようにも、その日のニュースは限られているから、ごく一部しか報道してくれない。しかし、これを仮に年4回に分ければ、4回機会があって、国民の目に触れるチャンスが4回に増えるということですね。それが国民の認知度を上げることにも貢献するという改革ですね。
田中 実は記者へのレクチャーをしたときにメディアが最も関心を示してくれたのは、この報告時期の分散化でした。その結果、与野党両方の議員の方からもポジティブな意見をいただいています。
土居 それはすばらしいですね。年1回の報告は会計年度の仕組み上やむを得ない部分もあります。しかし、会計検査はその予算のサイクルから多少独立してもいいと私も思います。
田中 実際に臨時国会が秋にあったとしても、常会は1月からで、決算の審議は4月頃になることが多いのでかなり間が空きます。ここはもう少し発表の仕方を工夫して、国会の記憶に残るような形で出していきたいと思っています。
土居 最後に新型コロナ対策予算の使われ方を今後に活かすための教訓として、会計検査院長として何かお考えになっていることがあれば、ぜひお聞かせください。
vol.101
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