台湾や韓国が戦後も日本の反共防波堤として軍事・独裁体制下に置かれた末、今や東アジアでただふたつ、政権交代可能な2大政党制を維持していることも連想する。台湾や韓国は、日本に抑圧されてきたが故に、日本を追い越せたのか。
沖縄が独自の文化や風土を、本土に「かっこよく」感じさせられるようになったのも、特に台湾や韓国で民主化が進んだのと同時期だ。
「日の丸」を掲げて本土復帰しても基地問題は解決しないなか、自らの文化的価値などを再考してきた結果、90年代以降の、本土の左翼から観光客までが「かっこいい」と思う今の沖縄がある(これもよしあしだが)。
東北は? 私の感じてきた「理屈以前の感覚」は、「中央」に同化しようと地元を「裏切った」後ろめたさ。「かっこ悪い」意識は同化政策のなれの果て。日本本土の側にいた東北の私に、沖縄や台湾、韓国のような「かっこよさ」をつかむ糸口は見つからない。
それでも、東日本大震災後、原発事故などに衝撃を受けた東北学の論者らが、こう言っていたことを思い出す。「東北は、実はまだ植民地だった」。
この言葉を呉の議論に照らして咀嚼し直せば、違った景色が開けるかもしれない。そんなことを、最近は思っている。
鈴木英生(Hideo Suzuki)
1975年仙台市生まれ。京都大学卒業。2000年、毎日新聞社入社。青森・仙台両支局を経て、東京・大阪両本社の学芸部で延べ10年以上論壇を担当し、18年からオピニオングループ(現オピニオン編集部)。著書『新左翼とロスジェネ』。共著『1968年に日本と世界で起こったこと』。構成などを担当した本に『中島岳志的アジア対談』、『日本断層論』(中島さんと詩人、ノンフィクション作家の故森崎和江さんの対談)、『目撃者』(報道写真家、故三留理男さんの回想記)など多数。
『フォルモサ・イデオロギー──台湾ナショナリズムの勃興 1895-1945』
呉叡人[著]梅森直之・山本和行[訳]
みすず書房[刊]
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