とはいえ、本企画での文系研究者との交流を通じて、文系と理系の「違い」ばかりが目についたかといえば、そうではない。研究が、本人にとっては当たり前過ぎて、却って説明が難しいくらいに楽しい活動である点は、文系理系に共通だと改めて思った。
「そこに山があるから」とつぶやき、世界最高峰エベレストの初登頂を目指し、そして失敗し落命した登山家、ジョージ・マロリー。訳もなく無性に追求したいことを見つけたという一点において、彼はシンプルに幸せだったろうと私は思う。
しかし、実のところ彼は、何故山に登るのか、登った後どうするのかについて、あまり考えていなかった、ということはないだろうか。
文系、理系の私達それぞれが営む研究活動は、等しく「山登り」で、文化そのものだ。そう考えると、COI表明の有無は、山登りの「流派」の小さな違いなのかも知れない。
※第5回 「パワーポイントは要らない」? 文系のプレゼンテーション方法に驚くも「言葉」に納得した理由 に続く。
村田 純(Jun Murata)
1996年京都大学農学部卒業、2002年奈良先端大バイオサイエンス研究科博士後期課程修了。NEDOフェロー、カナダBrock大学博士研究員、奈良県中小企業支援センター博士研究員を経て、現職。専門は植物生化学、植物特化代謝、根圏環境生物学。植物の低分子化合物がどのような生理機能を持ち、どう作られているかを明らかにしていきたい。公益財団法人サントリー生命科学財団HPはこちら
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