アステイオン

座談会

中露に挟まれたモンゴルの「アンダ」(戦略的パートナーシップ)とは──モンゴルから中華を見る[後編]

2023年06月07日(水)10時57分
小長谷有紀+岡本隆司+田所昌幸 構成:荻 恵里子(京都府立大学共同研究員)

小長谷 ほかの問題を見えなくするために、あえて民族問題を前景化しているのではないかと思っています。その意味では、真に中国にとって怖い問題とは何なのか、と。

岡本 それが分からないですよね。歴史をやっていると文化大革命の時期が非常に面白くて、先生がさっきおっしゃったように、民族問題ではなく階級問題だ、と呼号していました。

要するに自分たち、あるいは中国と違うことをやるのがよくないということです。ですから、イスラムに引っ張られたり、香港のような民主主義に引っ張られるということが許せないので一色にしようとします。

しかし、どうしてそこまで焦っているのかが本当に謎なのですが......。

小長谷 それはやはり現代的な意味での階級問題ではないでしょうか。今は経済格差が中国国内でも大きく、日本で百貨店の店員をやっている友人は、何人かに一人は「全部お買上げ」というようなスーパーリッチがいると話していました。

そのスーパーリッチと、普通の農村にいて北京に行く機会も少ない人との間の格差が最大の課題なのではないかと思っています。つまり、その格差が目立たないように少数民族の問題を前景化しておこうというのが本当のところではないかと仮説を立てています。

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岡本 先ほどおっしゃった「待っていたら民族問題はなくなる」というのは確かに至言です。格差の問題も同じですが、よくよく考えてみると、その時まで今の中国の政体が保つかどうかということもあります。

予期せぬ問題が次々と起こるので、中国政府は統制を強めたいというのは分からないわけではありません。しかし、やられているほうはたまらない。

今の中国が民族問題を起こしていることに、モンゴル人、あるいはモンゴル国の人たちからは実際にはどういうふうに見えているのでしょうか。

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