5月22日迎賓館にて Jonathan Ernst-REUTERS
日本人はアメリカが好きだ。内閣府が今年1月に発表した最新の「外交に関する世論調査」によると、アメリカに「親しみを感じる」が回答者の88.5%、日米関係が「良好だと思う」が91.3%という結果が出た。
戦後の日本人は概ねずっと親米的であったが、しばらく前までは根強い反米感情も存在した。上記調査でも80年代には、日米通商経済摩擦などを背景に親米の割合が60%台まで二度下がった。
冷戦終結後、それまでの左の反米に右の反米が加わり、2000年代には9.11同時多発テロの後のアフガン・イラク戦争に反発が強かった。上記内閣府の調査によれば、2004年に「親しみを感じる」が71.8%と、1995年の71.2%以後最も低い数字であった。
熱心な編集者に勧められて、筆者は2003年に『それでも私は親米を貫く』(勁草書房)という日米関係についての評論集を上梓した。この本の題名には、当時の反米的な雰囲気に楯突く意図があった。
前書きに、「アメリカに対する反発が現在の日本にかなり幅広く存在するのは、まちがいない」と記したし、ある雑誌の編集者から、「当今、自ら手をあげて親米だと名乗りを上げるのは、阿川さんぐらいしかいないでしょうなあ」と言われた、と別の章でも書いている。あの頃のもやもやした嫌米・離米の雰囲気は、どこへ行ってしまったのだろうか。
その後日本人がより親米的になったのには、いくつか理由がありそうだ。日本に代わり中国がアメリカにとって経済技術面での最大の脅威となり、日米間の緊張が消えたこと。日本企業の対米直接投資が進み、これまで比較的なじみのなかったテキサスなどとの関係が深まったこと。東日本大震災後の米軍による被災者救援が、日米国民の間に新たな友情を生んだこと。
なかでも、強大で覇権主義的な現在の中国に対抗するには、日本はアメリカと組み続けるしかないという認識が定着した。そのことが大きいと思われる。
ちなみに2021年に発表された最新の外務省海外対日世論調査の結果を見ると、アメリカ人の対日観もすこぶるよい。一般人の74%、有識者の98%が、日米関係は良好と答えている。
こうした数字は、現在の日米関係が安定していて特に心配することがないとの印象を与える。しかし、たまたま中国と対峙する上で日米が利益を共有している事実を反映しているだけなのかもしれない。長期的にも日米関係は堅固かつ良好であり続けるだろうか。
その点で最近気になるのは、アメリカ国内諸派間の対立と分断が深刻である、いつか内戦が起こり分裂し民主主義が終焉する危険がある、という議論が、当のアメリカや隣国のカナダで盛んなことである。最近の世論調査でも、自分の住む州の連邦離脱がありうると考えるアメリカ人は、少なくない。
そうであれば、いざという時にこの国は同盟国として頼りになるだろうか、と日本人は心配する。アメリカ衰退論は戦前からあって、あたったためしがないが、それと似た不信感が再び頭をもたげる。
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