描かれた人間と描く人間の双方がくっきりとした姿で立ち現われていること、それが学芸賞の最大の要件なのではないかというのが、少なくとも私のもっとも強い印象である。しかも、そういう傾向が、年々、鮮明になっているという印象である。あるいはここに、サントリー学芸賞が望ましいと考えている人文科学、社会科学の姿があるというべきなのかもしれない。
賞とその選考に関するかなり立ち入った感想を述べる結果になったが、ぜひ書いておきたかった。サントリー学芸賞そのものが生々しい出来事としてある理由とも思われるからである。
(『サントリー学芸賞選評集2009~2018』より転載)
*『サントリー学芸賞選評集』は下記サントリー文化財団Webサイト内にてe-pub形式でご覧いただけます。
https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_ssah/list.html
三浦 雅士(みうら まさし)
文芸評論家
vol.101
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