アステイオン

科学

科学ノムコウとコチラノ未来

2019年01月18日(金)
早丸一真(日本国際問題研究所 研究員・2017年度 鳥井フェロー)

西村氏は「未来というのは基本的に不確実なものなので、それが完全に見通せるといったことは全く考えていない」という。ただ一方で、何らかの見通しをつけていくということは、限定された分野において、あるいは狭いカテゴリーの中ではできるのではないか、そのためにそれを将来の課題に対処する際に活用可能なツールに加工していくことは可能だと考えている。100年後の未来社会のデザインを具体化してゆく基本的な考え方は、未来の見通しのようなものをつくることによって、その構想をもとに今あるものを組み合わせて新しいイノベーションを起こすという発想である。

テクノロジーの進化の予測を重視する西村氏は、また、未来の技術と社会テーマを組み合わせることによって新たなトピックを見出していくことの重要性を提起する。西村氏の目指す方法論は、社会テーマと未来の技術をもとにアイデアを生み出し、それをデータベース化して、データベースのアイデアもさらに統合し、また、アイデアを募る循環を連鎖させ、集積を進め、そして、100年後のテクノロジーとそのアイデアを結びつけていくことによって科学を基盤とする未来社会のシナリオをつくるというところに行き着くようである。

基調講演が終わると「議論百出」のディスカッションに突入した。「無限にあるアイデアを誰もが共有可能な情報基盤として整理できるか。」「100年後の政治と民主主義の状況はどの程度わかるか。」「現在に近い時代ほど取り組むべきトピックが多かったという理解は妥当か。」「何を語るかというよりも、いかにという問いの方が重要になってきているのではないか。」「テクノロジーの未来と社会の未来を掛け合わせて様々なアイデアを出していくというのは、企業にとってはネタの宝庫だ。」「我々は生活の中で、30年、40年後のことを見据えて判断しているのではなく、昨日今日のことをふまえて30年、40年後を予測しているのではないか。」「テクノロジーの発展を所与の前提と考えてもよいか。」「未来のガイダンスが欲しいという社会のニーズは確かにある。」「論理的、数理的な知識と実践的な技術に関する知識には異なるところがあり、何と何を融合するかという問題があるのではないか。」以上は、出席者から投げかけられたコメントの一部である。

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