アステイオン

科学

科学ノムコウとコチラノ未来

2019年01月18日(金)
早丸一真(日本国際問題研究所 研究員・2017年度 鳥井フェロー)

Bulgac-iStock.

今回の「堂島サロン」は大阪大学のSSI(社会ソリューションイニシアティブ)の「SSIサロン」との共催であった。SSIは「命を大切にし、一人一人が耀く社会」という理念のもと、「まもる」「はぐくむ」「つなぐ」という3つの視点から命と向き合い、社会課題の解決に取り組むシンクタンクである。リーダーを務めておられる堂目卓生教授によると、SSIは、課題の発見・整理、課題ごとのプロジェクトチームによる研究活動、プロジェクト横断的なシンポジウムを通じた新たな社会・経済システムの構想と提言という3つのステップから成るらせん的な循環を30年続けるという長期的ヴィジョンを掲げている。

「堂島サロン」のホストも務めておられる堂目教授は、「SSIサロン」と「堂島サロン」は問題意識を共有しており、それは、私たちはどのような未来社会を描くべきか、その中で大学の果たすべき役割は何なのか、特に人文学、社会科学が果たすべき役割は何かということであると今回の「サロン」の趣旨を述べられた。こうして、2018年11月1日、大阪大学豊中キャンパス・大阪大学会館において、「科学技術と人間―未来社会に向けた文理融合のあり方」をテーマとする「サロン」の幕が開いた。

冒頭の基調報告は、ある碩学の言葉を借りれば「非常にprovocative」な内容で、先陣を切るにふさわしいものであった。報告を担当されたのは、NPO法人ミラツク代表、理化学研究所未来戦略室イノベーションデザイナーの西村勇哉氏であり、報告のタイトルは「科学・技術の進化と未来社会のデザイン」であった。西村氏の仕事には、NPOの運営、理化学研究所での研究、大学での教育という複数の側面がある。

創立から10年を迎えたNPOでは「すでにある未来の可能性」に着目し、一部の天才や先見の明がある個人だけが未来を考えるのではなく、一人一人、もしくは、多くの人々がともに未来を立ち上げていくことを目指し、北海道から沖縄まで3万人ほどの様々な業種の人々をネットワーク化し、彼らが実現したい未来をデータ化して社会の基盤となる情報ツールとして蓄積・活用している。

理化学研究所では、どうすれば100年後をロジカルに考えられるのかという課題に取り組み、基礎研究を行う研究者に対して研究によって突破しようとしているものと突破した先に何があるのかについてインタビューを行い、そうして得られた見通しを積み上げることによって未来社会を描く方法論を構築しようとしている。

PAGE TOP