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4秒×1万回で11時間の睡眠を確保...ヒゲペンギン「超細切れ睡眠法」採用の切実な理由
「睡眠」をとるヒゲペンギン Mogens Trolle-Shutterstock
<ヒゲペンギンが南極で警戒するのは厳しい寒さ、卵やヒナを狙う捕食者だけではない。1日に「マイクロスリープ」を1万回以上行う理由とは?>
日本は他国と比べて国民の平均睡眠時間が短いことで知られています。年末年始の休みに寝溜めをして、やっと日頃の睡眠不足を解消した人も多いかもしれません。
経済協力開発機構(OECD)が2021年に行った調査によると、日本の平均睡眠時間(7時間22分)は先進国を中心とした33カ国の中でもっとも短く、アメリカとは89分、中国とは100分の差がありました。
現代人は通常、1日に1回、夜間に6~9時間程度のまとまった睡眠を取ります。一方、多くの動物は1日に複数回の睡眠を取ります。たとえば、成犬は1日におよそ12~15時間眠りますが、夜間の8時間を観察したら、睡眠16分、覚醒5分の21分周期が23回繰り返されていたという調査報告があります。
睡眠時間の長さは、食性や体の大きさに関連していると考えられています。草食の場合は肉食と比べて1回に摂取できるカロリーが少ないので、頻繁に食べなければなりません。さらに、被食者は捕食者の気配を察知して逃げなければならないため、ゆっくりと熟睡する余裕はありません。また、体が小さい場合は、体温を維持するためにこまめに食べる必要があります。
フランスのリヨン神経科学研究センターやドイツのマックス・プランク研究所などが参加する国際研究チームは、「南極のヒゲペンギンは、1日に平均4秒の超短時間睡眠を1万回行うことで必要睡眠時間である11時間を達成している可能性がある」と発表しました。研究成果はアメリカの科学学術総合誌「Science」に23年11月30日付で掲載されました。
ヒゲペンギンは、なぜヒトとはまったく異なる「超細切れ睡眠法」を採用しているのでしょうか。研究を概観しましょう。
ゆっくり眠っていられない理由
ヒゲペンギンは体長が約70~75センチ、体重が4~7キロほどの中型のペンギンで、南極大陸や周辺の島々などに生息しています。目の後ろから喉にかけて、ヒゲのような黒い模様があるのが名前の由来です。ペンギンの仲間の中ではもっとも生息数が多く、約800万羽のつがいがいると見積もられています。
ヒゲペンギンにとって南極の環境が過酷であることは、厳寒のせいだけではありません。
ペンギンのカップルは陸上のコロニー(繁殖地)に集まり、それぞれが営巣します。片方の親は餌を採りに海まで出かけ、もう片方は卵やヒナを守るために巣で過ごします。餌採り係と巣を守る係は、交代しながらオス、メスとも行います。
採餌係はなるべく早く巣に帰らなくてはなりません。また、巣の周りには、卵やヒナを狙うナンキョクオオトウゾクカモメがいるだけでなく、巣の材料を盗もうとするヒゲペンギンの仲間もいます。つまり、常に警戒していなければならないため、ゆっくりとは眠っていられません。
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