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日本の研究グループが世界新の成果 今さら聞けない「超伝導」の基礎と歩み
もっとも、超伝導は「電気抵抗ゼロ」「磁気浮上」などの特性は観察されるものの、なぜそうなるのかは57年にBCS理論が提唱されるまでは解明されませんでした。提唱者のバーディン (Bardeen)、 クーパー (Cooper)、 シュリーファ(Schrieffer) は、この功績で72年にノーベル物理学賞を受賞しました。
理論が解明され、超伝導体にはジョセフソン効果(73年ノーベル物理学賞)などさらなる特性が発見されるものの、超伝導が起きる温度(臨界温度)は70年代までは、発見時のマイナス269℃(水銀)からマイナス250℃(ニオブ・ゲルマニウム合金)までしか更新されませんでした。
超伝導線材で電気を送れば、発電所から家庭や工場までロスがありません。閉じた回路を作れば電流はいつまでも流れ続け、電流を貯蔵することができます。強い磁場を電力消費なしに発生させることもできます。つまり、送電や各種の産業装置の高性能化、省エネが可能となり、良いことずくめです。けれど、マイナス250℃程度に冷やす必要があるならば、超伝導状態を保つためには液体ヘリウムを使う必要があり、多大なコストがかかってしまいます。
日本人研究者による画期的な成果
BCS理論の枠組みでは、金属の超伝導はマイナス233℃程度までが限界と予想される中、80年にはそれまでの常識に反した有機物での超伝導が観測されます。さらに86年には、IBMチューリッヒ研究所(スイス)のヨハネス・ゲオルク・ベドノルツとカール・アレクサンダー・ミュラーによって、従来の物質よりも臨界温度が約60℃も高い、液体窒素の温度(マイナス196℃)を越える「高温超伝導体(銅酸化物)」が発見されました。
空気中に多量にあり安価な窒素を冷却に使えるようになると、超伝導の応用の幅は広がり、実用化が一気に現実的となります。高温超伝導は世界中で熱狂的に迎え入れられ、ベドノルツとミューラーは、発見の翌年である87年にノーベル物理学賞をスピード受賞しました。
超伝導の次の画期的な成果は、日本人研究者によって成し遂げられます。東京工業大・元素戦略MDX研究センターの細野秀雄特命教授が2008年に発見した「鉄系高温超伝導物質」(発見当時はマイナス247℃が臨界温度)です。鉄などの磁石になる物質は、超伝導を起こしにくいという従来の考えを打ち破る発見でした。
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