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死の間際の「走馬灯」は実在する? 世界初の脳波詳細記録と臨死体験の研究史
死の前後の30秒間、夢を見たり記憶を呼び起こすといった高度な認識作業を脳が行っている可能性がある(写真はイメージです) ifc2-iStock
<臨死体験がオカルトや非科学的な話でなくなったのはいつから? 走馬灯を見る人には特徴がある? 「人生が走馬灯のように見える」は、科学的にどう説明されるのか>
臨死体験(Near Death Experience)の報告などから、人は死の間際に走馬灯のように様々な思い出が映像として見えると広く信じられています。
カナダ、中国、アメリカなどから成る研究チームは先月22日、偶然に記録できた死の前後30秒の脳波を解析したところ、実際に死の直前には短時間で多くの記憶が呼び起こされている可能性があると発表しました。「人生の走馬灯」は、どのように科学的に説明されているのかを解説します。
臨死体験が「オカルト」「作り話」ではなくなるまで
臨死とは、生死をさまよったり、いったん死んだと思われた人が再び生き返ったりすることです。これまでに行われた調査では、心停止から蘇生した人の約1割が、これまでの人生がフラッシュバックされた(走馬灯の体験)、ベッドに横たわる自分の姿を体外から見た(体外離脱)、光のトンネルや死後の世界を見たなどの経験を語っています。
臨死体験の研究は1892年、スイスの地質学者のアルベルト・ハイムが「登山時の事故で臨死体験をした」と発表したことにさかのぼります。20世紀初めにはアメリカの心霊研究家やイギリスの物理学者が研究しましたが、その後、1970年代までは目立った研究はありませんでした。
1975年になると、医師のエリザベス・キューブラー=ロスが『死ぬ瞬間』(邦訳・読売新聞社ほか)、医師で心理学者のレイモンド・ムーディが『かいま見た死後の世界』(邦訳・評論社)を出版したことで、臨死体験が再び注目されるようになりました。とくに『死ぬ瞬間』は、医師という専門家が約200人の臨死患者に聞き取りして統計的にアプローチしたもので、それ以降、医学専門誌などにも臨死体験に科学的なアプローチを試みた論文が掲載されるようになります。
2001年には、オランダの医師ヴァン・ロンメルによる344名の心停止患者を対象とした臨死体験の調査が、世界四大医学雑誌に数えられる「ランセット」に掲載されました。臨死体験は、もはやオカルトや非科学的な作り話ではなくなったのです。
日本で臨死体験の研究が脚光を浴びるようになったのは、昨年亡くなったジャーナリストの立花隆さんの功績が大きいでしょう。1991年のNHKスペシャル「立花隆リポート 臨死体験〜人は死ぬ時 何を見るのか〜」と1994年に出版された『臨死体験』(文藝春秋)で、臨死体験という訳語と最新の研究が一般にも知られるようになりました。
2000年代に入ると医学技術の発達により、心肺停止から蘇生する人の数はかつてよりもさらに増えました。
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